2022年1月18日(火)
社会リポート
生活困窮者への特例貸付
“貸し渋り”やめて
全生連「コロナ第6波下 是正求める」
新型コロナ感染症の影響で生活困窮に陥った人を対象に、各都道府県社会福祉協議会は特例貸付を行っています。この貸付申請をめぐり、「高齢だから」「減収分のみ貸し付ける」などと条件を付けた“貸し渋り”を行う社協があります。必要な人が必要額を借りられるよう是正することが喫緊の課題です。(岩井亜紀)
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新潟市では、古美術販売業の女性(79)が高齢を理由に、総合支援資金特例貸付を12万円、1カ月分しか借りられませんでした。
上限額申請も
飲食店を営む女性(72)=同市=は、障害のある子どもと2人で暮らします。2人の年金と店の売り上げで月約30万円の収入がありました。コロナの影響で20万円以上あった営業収入は10分の1に激減。昨年、同貸付上限の20万円を申請しました。
約1カ月後、地域の社協から書面で、別の書類提出を求められました。そこには「基本的に、減収前と減収後の差額分×3か月の貸付とされています」とありました。当初、借りられたのは、15万円を3カ月分でした。
特例貸付は、借り受け時に最大金額まで借りられなかった場合については、借入期間中であれば借入月数や額を変更できます。一方、借入期間が終わってしまうと、最大金額まで借りていなくてもその残額分を改めて借り入れることはできません。
全国生活と健康を守る会連合会(吉田松雄会長)によると、同様の貸し渋りの事例が全国各地で起きています。
全生連は昨年12月、厚生労働省に対し、こうした貸し渋りを是正することと、必要額の貸付がなされなかった世帯への“追加貸付”を行うよう要請。同省から、「追加貸付は否定しない」「さかのぼって貸し付けることは可能」「新潟県に事情を聞く」との回答を引き出したといいます。
新潟県社協はその後、貸付期間が終了した世帯に対しても、希望すれば「上限額までの差額分の範囲内で追加貸付を実施する」との通知を市町村社協に出しました。
「大きな成果」
全生連の吉田会長は「大きな成果」だと指摘。他方、厚労省担当者は、追加貸付は特例的であり一般的にはしないと話しているといいます。
同省によると、2019年度の緊急小口資金貸付の実績は全国で9937件。それが、コロナ禍の20年3月25日~21年12月18日までの約1年9カ月で、306万3342件にも激増しました。
特例貸付は市区町村の社会福祉協議会が今年3月末まで申し込みを受け付けています。
吉田会長は「いま、新型コロナ第6波に入っています。特例貸付を継続し、全国的に追加貸付をするよう要請していく」と語っています。
特例貸付 新型コロナウイルス感染症の影響による休業や失業などで困窮した人に、各都道府県社会福祉協議会が実施。保証人不要で無利子です。一時的な資金が必要になった人に貸し付ける緊急小口資金(20万円以内)と、生活の立て直しが必要な人を対象に月15万~20万円を原則3カ月まで貸し付ける総合支援資金があります。