2022年1月15日(土)
主張
「敵基地攻撃」
相手国殲滅の打撃力許されぬ
17日開会の通常国会では、岸田文雄政権が検討を進めている「敵基地攻撃能力」保有の問題が焦点の一つになります。「敵基地攻撃」に関し安倍晋三元首相が“報復のための打撃力”を持つことを主張するなど、危険な狙いが浮き彫りになっています。「戦争放棄」を掲げる憲法9条と相いれないたくらみを許してはなりません。
狙い明かす安倍氏発言
岸田政権は、政府の外交・軍事政策の基本方針である「国家安全保障戦略」とそれに基づく「防衛計画の大綱」や「中期防衛力整備計画」の年末の改定に向け作業に着手しています。岸田首相はこの中で「敵基地攻撃能力」保有の検討を繰り返し表明しています。
7日の日米外交・軍事担当閣僚会合(2プラス2)では日本側が「ミサイルの脅威に対抗するための能力」検討を米側に約束し、林芳正外相は「敵基地攻撃能力」が含まれると認めています。
「敵基地攻撃能力」について日本共産党の志位和夫委員長は13日の記者会見で、相手国を「殲滅(せんめつ)」する「打撃力」であることを安倍元首相の発言などから明らかにしました。
安倍氏は昨年11月の講演(日本協議会・日本青年協議会機関誌『祖国と青年』1月号所載)で「よく『敵基地攻撃能力』という言葉が使われますが、この表現は私はあまり適切ではないのではないかと思います。敵基地だけに限定せず、『抑止力』として打撃力を持つということです」と述べています。その上で「米国の場合は、ミサイル防衛によって米国本土は守るけれども、一方で反撃能力によって相手を殲滅します。この後者こそが抑止力なのです」と語り、「打撃力」とは「相手を殲滅」する能力だと説明しています。「全面戦争」をたたかう能力に他なりません。
さらに、日本にミサイルを発射した北朝鮮をたたくため在日基地から発進する米軍機と一緒に自衛隊機が出て行く必要を説き、「(日本が)打撃力を持たなければ、私は日米同盟は成り立たないと思っています」と強調しています。相手国殲滅のために出撃する米軍への協力に不可欠だというのです。
「安倍政権において、スタンド・オフ・ミサイルという形で、具体的な能力については保持しました。この能力を打撃力、反撃能力としても行使できるようにしていくことが求められています。これは北朝鮮に対してだけではなく、南西沖についても応用できる」と述べているのも重大です。
安倍政権時、防衛省はスタンド・オフ・ミサイル=長距離巡航ミサイルの取得を始め、岸田政権下でも導入や新たな開発を続けています。安倍氏は当時、「敵基地攻撃を目的とするものではない」と国会で答弁していました。しかしそれが偽りで、当初から「敵基地攻撃」への転用を企てていたことを示しています。攻撃の矛先が北朝鮮に加え、「南西沖」=中国に向けられているのも大問題です。
「戦争する国」阻止を
安倍氏は「法整備はできつつありますから、後はしっかり戦略に書き込んで実行していくことが大切」と語っています。岸田政権による「国家安全保障戦略」改定の狙いがどこにあるかは明瞭です。日本を「戦争する国」に造り変えることを阻止する運動と世論を大きくしていくことが必要です。