2022年1月9日(日)
主張
「桜」前夜祭
安倍元首相の逃げを許さない
安倍晋三元首相の後援会が「桜を見る会」前夜祭の費用を補填(ほてん)していた問題で、東京地検特捜部は昨年末、安倍氏を再び不起訴(嫌疑不十分)にしました。検察審査会の「不起訴不当」の議決(昨年7月)を受けた再捜査は終わりました。しかし、安倍氏の国政私物化の象徴である「桜を見る会」疑惑は数多くが未解明のままです。幕引きさせるわけにはいきません。説明責任を果たさない安倍氏の逃げを許さず、国会でただすことが必要です。解明に後ろ向きの岸田文雄首相の姿勢も問われます。
秘書に責任を押し付ける
都内の高級ホテルで開かれた前夜祭は、参加者の会費だけでは飲食代はまかなえず、差額を安倍氏の後援会が補填した公職選挙法違反(寄付行為の禁止)の疑いが問題になっていました。東京地検特捜部は2020年末、後援会が4年間で計約700万円を補填したのに、政治資金収支報告書に記載しなかったことの違法性を認め、後援会代表の元秘書を略式起訴しました。
一方、安倍氏については嫌疑不十分で不起訴にしました。その際、安倍氏は衆参の議院運営委員会などで「(補填は)自分が知らない中で行われた」などと述べ、秘書に責任を押し付ける主張を繰り返しました。国会で「補填はしていない」などのうその答弁を118回もしたことにも根本的な反省を示しませんでした。
市民で構成する検察審査会が「不起訴不当」を議決したのも、安倍氏の言い分にはあまりにも無理があるためです。審査会が「総理大臣であった者が、秘書がやったことだと言って関知しないという姿勢は国民感情として納得できない」と指摘したのは当然です。
検察は再び不起訴にした捜査結果の詳細を説明していません。疑惑を追及する法律家からは「おざなりな再捜査」と批判が上がっています。安倍氏は、前夜祭の会場になったホテルの明細書や領収書の提出にも応じようとしません。補填の費用をどこからねん出したのかも不明です。疑惑はいっそう深まっています。
公的行事「桜を見る会」に選挙区の山口県から支援者らを大量に招待し、飲ませ食わせすること自体、税金を使った買収の疑いがあります。首相による国政私物化を曖昧にすることはできません。
安倍氏は不起訴について「厳正な捜査の結果」とコメントを出しただけです。安倍氏は総選挙後、自民党最大派閥の会長になったり、党内の組織の最高顧問に就任したりするなど活動を活発化させています。疑惑に頬かぶりし続ける安倍氏を復権させる自民党の姿勢は重大です。岸田首相は忖度(そんたく)をやめるべきです。国会での安倍氏の証人喚問は不可欠です。
「負の遺産」徹底解明を
第2次安倍政権以降、「森友・加計・桜」をはじめ、河井克行元法相夫妻の大規模買収、吉川貴盛元農林水産相の鶏卵汚職、菅原一秀元経済産業相の公選法違反など、「政治とカネ」疑惑とモラル崩壊は枚挙にいとまがありません。財務副大臣だった遠山清彦・元公明党衆院議員らが貸金業法違反で在宅起訴された事件も追及が必要です。「負の遺産」を一掃し、疑惑隠ぺいの政治を終わらせ、清潔・公平・透明な政治を実現することは喫緊の課題です。