しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2022年1月7日(金)

敵基地攻撃能力は「報復」攻撃のため

危険な安倍元首相の発言

 安倍晋三元首相は、「読売」1日付のインタビューで、敵基地攻撃能力の保有について危険な議論を展開しています。

 「日本が攻撃されて被害が出た場合」―報復は米軍に頼るが、自衛隊が「日本は政策判断として敵基地攻撃能力を保有していない」として拒否したら、「(日米)同盟は機能しない」などとして、「敵基地攻撃能力の保有は必須」と主張。また「相手に『最初の一撃を放ったら、自分たちも相当手痛い被害を受けるかもしれない』と思わせることが大切」だとも強調しています。

「打撃力」を保有

 これは相手国が攻撃に着手した段階で、攻撃の策源地(ミサイル基地)をたたき防御するというもともとの「敵基地攻撃能力」とは異なり、「報復のための打撃力」を保有せよという主張です。しかも報復のために敵国のせん滅に出撃する米軍との協力のために不可欠だというのです。

 日本協議会・日本青年協議会機関誌『祖国と青年』1月号で安倍氏は、「よく『敵基地攻撃能力』という言葉が使われますが、この表現はあまり適切ではない」とし「敵基地だけに限定せず、『抑止力』として打撃力を持つ」とも強調。「安倍政権において、スタンドオフミサイルという形で、具体的な能力については保持しました。この能力を打撃力、反撃能力としても行使できるようにしていく」「これは北朝鮮に対してだけでなく南西沖についても応用できる」と主張しています。

 しかし、政府が建前としてきた専守防衛の原則でも、国連憲章をはじめとする国際法においても、武力攻撃が認められるのは相手国の攻撃を排除するためです。攻撃を受けたことに対し「仕返し」として行われる報復攻撃は違憲、違法とされています。

「台湾有事」でも

 仮に報復的な反撃力を持つことで相手の攻撃を思いとどまらせる「抑止」に重点があるとしても、違法な報復攻撃を実行することが前提となった議論です。

 しかも攻撃目標を「敵基地だけに限定せず」としており、政治的経済的拠点の攻撃も示唆。また北朝鮮だけでなく「南西沖についても応用」としていることは、台湾有事における中国本土に対する攻撃の可能性を排除しないものです。

 そういう攻撃力を米軍に頼らず日本が独自に持ち、米軍とともに実行する―。「敵基地攻撃」を名目に進められようとしているミサイル配備をはじめとする「打撃力」の強化は、まさに米中の軍事的緊張の中で、日本が米国の側に立ってさらに緊張を激化させる危険きわまりない違憲の議論です。(中祖寅一)


pageup