2021年12月23日(木)
中東派兵 憲法の制約説明
海部氏「大戦で世界に迷惑」
外交文書公開
1990年の湾岸危機でブッシュ米大統領が海部俊樹首相に自衛隊派兵を要求した際、海部氏が日本のアジア諸国への侵略戦争の責任を強く意識し、「憲法の制約」を掲げて慎重姿勢を示していたことが、外務省が22日に公開した外交文書から明らかになりました。(関連記事)
外務省の90年9月30日付極秘電信によれば、イラクのクウェート侵攻に端を発した湾岸危機を受けた9月29日、米ニューヨークでの首脳会談で、ブッシュ氏は「日本の憲法上の制約は理解している。いかに実現されるかは承知しないが、日本が軍隊(FORCE)を中東における国際的努力に参加せしめる方途を検討中と承知するが、そのような対応が有益であること及び世界から評価されるであろう」と表明。多国籍軍への自衛隊参加を要求しました。
これに対して海部氏は「わが国は日米安保体制の下の過去45年間の平和になれている」とした上で、「日本人は第2次大戦の際に世界に多大な迷惑をかけたことから武力の使用または武力紛争への関与は行わない旨決意している」と述べ、これが「憲法の枠組み」だと説明しました。
その上で、海部氏は、非軍事組織の国連平和協力隊を創設し自衛隊員を一部参加させる「国連平和協力法案」に言及。「現時点においては非戦闘、非軍事のあらゆる協力を実現する方向で努力している」と述べるにとどまりました。
同法案は90年11月に廃案となりましたが、湾岸戦争の終結後、日本政府はペルシャ湾に掃海艇を派遣。90年代以降の海外派兵への突破口となりました。
海部氏は米側の派兵要求に対して、「憲法の制約」との妥協点を探ろうとしていましたが、憲法9条が改悪されれば「制約」は一切なくなり、無制限の海外派兵に道を開く危険を示しています。