2021年10月4日(月)
主張
国連の核廃絶議論
禁止条約の発効で新たな勢い
核兵器禁止条約が発効(1月22日)したもとで初めての国連総会が9月中旬から開かれています。総会では、禁止条約を力に廃絶に前進しようとする世界の流れがさらに広がりつつあることが示されています。
国際社会の歓迎と決意
各国首脳らが演説する国連総会の一般討論では、禁止条約の発効を歓迎する発言が相次ぎました。
オーストリアのシャレンベルク外相は、廃絶に向けて「禁止(条約の発効)は最初のステップだ」と述べ、来年3月に禁止条約の第1回締約国会議をウィーンで行うことを表明しました。ローマ教皇庁(バチカン)のパロリン国務長官も廃絶への「主要な前進だ」と評価し、タイのプラユット首相は、条約発効は「次世代に核兵器のない世界を渡すという国際社会の決意表明だ」と強調しました。条約発効が、国際社会に新たな勢いを生み出しています。
「核兵器全面廃絶国際デー」(9月26日)を記念して、各国の大統領や首相などが参加する国連総会のハイレベル会合(同28日)も開かれました。わずか1日の会合でしたが、60カ国以上がオンラインも含めて演説を行いました。その圧倒的多数は、禁止条約の発効を歓迎し、廃絶へと前進する行動を求める意見でした。
グテレス国連事務総長は、禁止条約の発効は核兵器廃絶の「希望の兆し」であり、「歓迎すべき進展だ」と述べ、ガイアナのアリ大統領は、禁止条約は核軍縮への歴史的な分水嶺(ぶんすいれい)だったと言い、各国に条約参加を呼びかけました。ナイジェリアのブハリ大統領も、「廃絶の緊急性はかつてなく高まっている」と直ちに行動することを訴えました。
核兵器禁止条約の締約国は56カ国、署名国は86カ国に達し、国連加盟国の過半数97カ国に迫りつつあります。禁止条約への支持と参加が広がれば、条約の法的な権威は一層強固なものとなります。そうした世界の流れがすすめば、核保有国の政策や世論にも影響を与えることになるでしょう。
菅義偉首相は総会の一般討論でビデオ演説し、「唯一の戦争被爆国として」と口にしましたが、核兵器禁止条約には一言も触れず、完全に無視しました。
ハイレベル会合でも、各国の首脳が演説をするなかで、日本は国連大使が発言しただけで、位置づけの低さが際立ちました。「ヒロシマ・ナガサキは繰り返されてはならない」(国連大使)と訴えるのであれば、いざというときには核兵器の使用も想定する「核抑止力」と決別すべきです。「核の傘」に頼るアメリカ言いなりの姿勢をいまこそ改めなければなりません。
条約に参加する日本を
総選挙に向けた市民と野党の共通政策では、核兵器禁止条約批准をめざすことが明記されました。被爆国であり、アメリカの同盟国でもある日本で、この目標を掲げた政権が実現すれば、世界でも北東アジアでも非核の流れを大きく後押しすることは明らかです。
2017年の国連会議で禁止条約の成立に尽力し、その署名、批准を政策に掲げる日本共産党の躍進が、今後のカギをにぎっています。禁止条約に参加し、被爆国にふさわしい役割を果たすために、総選挙での政権交代がいよいよ重要になっています。