2021年9月23日(木)
主張
自民総裁選と憲法
立憲主義破壊の加速を許すな
自民党総裁選の4人の候補者は、いずれも改憲推進で足並みをそろえています。自民党は安倍晋三前首相が打ち出した9条に自衛隊を書き込むなどの改憲案を党の方針として決定しています。4人ともその実現に取り組むことを明言しました。安倍前首相、菅義偉首相が推し進めてきた憲法を蹂躙(じゅうりん)する政治に反省がない点でも共通しています。憲法破壊に拍車をかけることは許されません。
改憲推進で足並みそろえ
総裁選に立候補した河野太郎規制改革担当相、岸田文雄前政調会長、高市早苗前総務相、野田聖子幹事長代行は、記者会見や討論会などで、改憲を加速する姿勢を鮮明にしています。自民党の改憲4項目((1)自衛隊の明記(2)緊急事態条項の創設(3)参院の合区解消など(4)教育の拡充)の実現にそろって意欲を示しました。
河野氏は「国会で議論し、合意に至ったところから順番に国民投票にかけていく」と主張、岸田氏は「改正をしっかりと実現しなければならない」と述べ、任期中の改憲を表明しました。高市氏は「時代に合った憲法にしていく取り組みを進める」「力を尽くす」と力説し、野田氏も「国民的な議論を始めていく」との立場です。
安倍前首相も菅首相も、憲法99条が定めた公務員の「憲法尊重擁護の義務」に反し、改憲の旗を振ってきました。
安倍氏らがとくに執念を燃やした9条改憲は、自衛隊を憲法9条に明記し、大手を振って海外での戦争に参加するのを可能にするなど、日本を「戦争する国」にする企てです。4人の中からは「台湾有事」での軍事的対応を認める発言も出るなど、危険を浮き彫りにしています。
緊急事態条項の創設は、時の政権に強力な権限を集中させ、人権の抑圧につながるものです。4人に平和主義や民主主義を守る立場がないことは明白です。
「安倍・菅政治」の憲法破壊の最たるものは、2015年に安倍政権が強行した安保法制=戦争法です。立憲主義をあからさまに踏みにじった暴挙は、その後、歯止めのない強権政治の横行を引き起こしました。菅首相による日本学術会議への人事介入は、憲法23条が保障する学問の自由の重大な侵害です。
4人の候補からは、こうした憲法破壊への反省はありません。
安倍・菅両政権は、野党から憲法53条にもとづいて要求された臨時国会の召集に応じてきませんでした。総裁選では4人ともこの憲法違反を問題にする姿勢がありません。
政権交代で憲法生かす
菅政権は先の通常国会で改憲に向けての「第一歩」と位置付ける改定国民投票法を成立させました。一方で、安倍前首相らが固執した改憲は思惑通り進まず、行き詰まっています。阻んでいるのは、改憲を望まない国民の世論と運動の力です。総裁選での4候補の改憲推進の立場は、国民の願いに真っ向から逆らうものです。
来たる総選挙で、改憲勢力を少数に追い込むことが重要です。市民と野党は「憲法にもとづく政治の回復」などを掲げた共通政策に合意しました。共同の力で政権の交代を実現し、憲法を壊す政治に終止符を打ち、憲法が輝く新しい政治を開くことが重要です。