2021年9月18日(土)
第46期 囲碁新人王戦 20日から決勝三番勝負
最後のチャンスか 初の女性か
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囲碁の上野愛咲美女流棋聖(19)と外柳是聞(せぶん)三段(26)の対決となった第46期新人王戦(しんぶん赤旗主催)の決勝三番勝負は20日(月)に東京都千代田区の日本棋院で開幕します。上野女流棋聖は女性としては青木喜久代七段(現八段)以来24年ぶり2人目の決勝進出。対する外柳三段は年齢制限で今期が新人王へのラストチャンスです。「初の女性新人王の誕生か、ラストチャンスをものにするか」―歴史的な決勝三番勝負には大きな注目が集まっています。
勢いに乗って楽しく
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「『女性初の新人王』ということは意識しないで、後悔しないように楽しく打ちたい」と明るく話します。
テレビ棋戦の竜星戦で準優勝するなど、女流棋戦(タイトル獲得数5)はもちろん全棋士参加の一般棋戦でも活躍。ただ、新人王戦は前期まで2回戦進出がベストで、予選敗退も少なくありませんでした。
1回戦の大竹優四段(現五段)との対局が今期、好調のきっかけ。「ヨセでギリギリ残して勝つことができた。苦手なヨセで勝てたことが自信になり、勢いに乗ることができた」と振り返ります。相手の大石を仕留める“ハンマーパンチ”が魅力、最近はヨセ勝負にも力をつけています。
外柳三段については「研究熱心な印象。序盤でつぶれないようにしたい」。
広瀬優一五段(第43期)、関航太郎七段(第45期)と同門で同い年のライバルが相次いで新人王を獲得。「2人には負けたくない。私もがんばろうと思った」と今期に懸ける思いを語ります。
「歴代の新人王はみなさん活躍されている。できたら優勝したい。決勝まで勝ち上がれたのは幸運でしたが、このままの勢いでがんばりたい」
うえの・あさみ 2001年10月26日生まれ。東京出身。藤澤一就八段門下。2016年入段、21年四段昇段。上野梨紗初段は実妹。
兄弟子と同じ場所へ
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5期連続5回目の本戦出場で、初の決勝進出です。年齢制限により今期が最後の新人王戦となります。
同門からは富士田明彦七段(第38期)、許家元十段(第40期)の2人の新人王を輩出。「新人王戦は注目される棋戦。兄弟子の表彰式に参加して、あの場に立ちたいという思いがあり、気合を入れてきた」と語ります。
これまではなかなか結果にはむすびつかず、2回戦どまりでした。今期は、姜旼侯四段(関西棋院)戦、牛栄子三段戦で、途中で逆転されながら、粘ってぎりぎり勝つことができたことが、好調のきっかけとなりました。
上野女流棋聖については「女流棋戦はもちろん一般棋戦でも活躍されている。勉強量で負けるわけにいかない。よく勉強して、体調を整えて決勝三番勝負に臨みたい」。
2016年には第42期天元戦で本戦出場を果たしました。今年は、これまで15勝7敗・勝率6割8分1厘。
決勝の舞台は他の棋戦も含めて今回が初めて。しかも新人王獲得はラストチャンスです。「これまでふがいない結果で、今期も決勝まで来られるとは思ってもいなかった。大きな舞台で恥ずかしくない碁を打ちたい」
そとやなぎ・せぶん 1994年12月23日生まれ。岩手出身。故高林拓二七段門下。2014年入段、18年三段昇段。
一流棋士への登竜門 新スター誕生に注目
昨年の第45期新人王に輝いた関航太郎七段は9日、芝野虎丸王座を破って一力遼天元への挑戦権を獲得しました。新たな新人王も決まらないうちに“現役の新人王”として七大タイトル(棋聖、名人、本因坊、王座、天元、碁聖、十段)への挑戦者となるのは初めての快挙です。
四冠を保持する井山裕太棋聖(第32期新人王)をはじめ現七大タイトルホルダーは新人王経験者ですが、新人王の最年少記録を塗り替えた一力天元が優勝した第39期以降、新人王経験者はタイトル戦に絡む目覚ましい活躍を見せています。
その筆頭は第42期新人王の芝野王座。新人王を獲得した2年後に史上初の10代名人に輝き、王座も相次いで獲得しました。
一力天元も新人王獲得後2年で天元に初挑戦して以来、5回のタイトル挑戦をへて、2020年に碁聖を奪取し、念願の七大タイトル初獲得となりました。
第40期新人王の許家元十段は新人王戦優勝の3年後に七大タイトルすべてを保持していた井山裕太七冠から碁聖を奪取。今年4月には2度目のタイトルとなる十段を獲得しました。
一流棋士への登竜門として注目されてきた新人王戦。新たなスターの誕生に目が離せません。
決勝の日程
第1局 9月20日(月) 東京・日本棋院
第2局 10月9日(土) 東京・日本棋院
第3局 10月15日(金) 東京・日本棋院
(決勝の模様はユーチューブ日本棋院囲碁チャンネルでライブ配信される予定です。いずれも午前10時対局開始)