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2021年8月25日(水)

主張

東京パラの開幕

「命を最優先」とは相いれない

 東京パラリンピックが開幕しました。コロナの感染急拡大に歯止めがかからず、医療崩壊の危機が進行する中での開催に不安と懸念、批判の声が上がっています。菅義偉政権は緊急事態宣言下に東京五輪を強行し、感染爆発を引き起こしました。現在の感染状況は五輪の時よりはるかに悪化しています。それにもかかわらずパラリンピックに固執する菅政権の姿勢は、国民の命と健康を二の次にするものです。パラリンピックは中止し、感染の抑え込みにあらゆる力を集中しなければなりません。

人流削減の提起に逆行

 東京五輪の際、緊急事態宣言は東京など6都府県に発令されていました。そのさなかに世界最大級のスポーツイベントを実施したため、各地で人の動きを促進し、感染の急拡大につながりました。

 緊急事態宣言の解除の見通しはたたず、いまや対象は13都府県に拡大され、期限も9月12日まで延長されました。さらに政府は、北海道や愛知県なども加える方針です。東京など大都市圏の感染状況の悪化が続くだけでなく、全国的に波及していることは深刻です。

 パラリンピックを行うことは、感染の抑止への逆行に他なりません。なにより国民への「誤ったメッセージ」です。人流の5割削減の徹底を呼びかける一方で、国際的なスポーツイベントは別扱いというのは説得力に欠けます。五輪直後のマスコミ世論調査でも開催で自粛が「ゆるんだ」の回答が6割を超えました。パラリンピック開幕日に行われた自衛隊ブルーインパルスの飛行でも密ができました。国民の行動に制約を求める緊急事態宣言とパラリンピックが両立しないことは明らかです。

 医療機関への負担増も問題になっています。政府はパラリンピック期間中、競技数が最も多い日で医師120人、看護師150人の体制を想定しています。コロナ急拡大で医療現場の人手が足りないというのに、パラリンピックに人員を割く余裕はないはずです。限られた医療資源は、コロナのための臨時医療施設づくりなど、国民の命を救うために使うべきです。

 競技場に小中高生を動員する「学校連携観戦」への異論も相次いでいます。辞退する自治体も出ていますが、政府や東京都は実施できるとの立場を変えません。参加する子どもには検査をするとか、座席に間隔を置くなどといいますが、集団で行動する機会を増やすことは感染リスクを高めます。10代以下での感染が顕著になり、夏休み明けの感染対策が学校の大きな課題になっているときに、連携観戦によって子どもを危険にさらすことは許されません。

アスリートの危険にも

 パラリンピックにはアスリートや関係者1万人以上が来日するとされています。基礎疾患があるなど重症化リスクを抱える人たちも数多くいます。重症化するアスリートの感染は命に直結します。東京五輪の時も、選手を一般の人と隔てる「バブル」方式が機能せず、選手村での感染確認が相次ぎました。会場などに出入りする委託業者を通じて感染の広がりを懸念する指摘も少なくありません。変異したデルタ株が猛威を振るう中で、パラリンピックを行うことは国民だけでなくアスリートにとっても危険です。無謀な大会はいまからでもやめるべきです。


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