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2021年8月11日(水)

主張

GAFA大もうけ

私的宇宙旅行より地球の事を

 米国の巨大IT企業がコロナ危機のもとで利益を大きく増やし、過去最高益を更新しています。“IT長者”ら大富豪の保有資産も膨らんでいます。米国経済の回復傾向が鮮明になる一方、発展途上国の経済はコロナ対策の遅れが響き、厳しさを増しています。コロナ危機によって格差がさらに拡大することのないよう、大企業や富裕層への課税など国際社会による取り組みが必要です。

富豪700人で独経済上回る

 IT大手アマゾンの創業者ジェフ・ベゾス氏がコロナ禍のさなかに行った宇宙旅行が批判を浴びました。国際NGOのオックスファムは「連邦所得税をほとんど払わないくせに自分の宇宙旅行には75億ドル(約8200億円)使う」と怒り、サンダース米上院議員は「最も裕福な連中は地球の事など気にしない」とツイートしました。

 米国の大富豪の保有資産を調べている政策研究所によると、ベゾス氏の資産は7月時点で2124億ドル(約23兆円)です。コロナ危機が深刻化した2020年3月から1・9倍に増やしました。10億ドル以上の資産を持つ米国の大富豪713人の資産は同じ期間で1・6倍に増え、総額4・7兆ドルと、ドイツの国内総生産(GDP)を上回る規模です。

 GAFAと呼ばれるグーグル、アップル、フェイスブック、アマゾン4社にマイクロソフトを加えた米IT大手5社の21年4~6月期決算は純利益の合計が749億ドルで前年同期の1・9倍です。コロナ禍でデジタル関連需要が伸びただけでなく、他社を排除して市場を独占していることが大もうけの根底にあります。

 米国ではGAFAなどの市場独占が公正な競争を妨げ、消費者の利益を損ねているとして反トラスト法(独占禁止法)に基づいて規制を強化する動きが強まっています。企業分割の要求も出ています。IT大企業の独禁法違反を問う、州当局による訴訟も相次いでいます。バイデン大統領も7月、大企業による市場独占で商品価格の高騰や賃金低下が起きているとして、政府機関に監督強化を指示する大統領令に署名しました。

 国際社会ではデジタル課税の導入が大詰めを迎えています。インターネットを通じて世界中に事業を展開するIT大企業の税逃れを許さないよう、130カ国・地域がグローバル企業への国際課税に大枠合意しました。10月の最終合意に向けた調整が行われます。

 国際通貨基金(IMF)は最新の経済見通しで、米国を中心に先進国の成長予測を上方修正する一方、新興国・途上国については下方修正しました。先進国との格差はさらに拡大しそうです。

「よりよい再建」のために

 IMFは、低所得国では当初の予測を8000万人近く上回る人々が極度の貧困に陥りかねないと警告しました。「すべての国が持続的な回復を享受する未来になるか、亀裂が広がる未来になるか」―今がその分かれ目にあるとし、低所得国にはコロナ対策として2000億ドル、先進国との格差解消の道筋を回復するためさらに2500億ドルが必要だとしています。

 国連はコロナ後の世界の「よりよい再建」を呼びかけています。多国籍企業や富裕層の税逃れを許さず、本来負担すべき税を払わせることが重要です。


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