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2021年8月1日(日)

東京五輪

苦境の国民 置き去りか

国民運動部長 深山直人

 お祭り騒ぎのような五輪の陰で、コロナ禍で苦境に立つ労働者や女性、中小業者らが置き去りにされています。

 「緊急事態宣言がずっと続いて心が折れそうだ。もう店をたたもうかと何度も考える」

 こう語るのは、営業自粛を強いられている東京都内の飲食店主。五輪で日本選手の金メダルを見ても気分は重いままだと語ります。

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 労働者の解雇や雇い止めは労働局集計だけで11万人を突破。実際はもっと多くの人が雇用を奪われています。

 「緊急事態宣言で勤務先が休業となったのに休業手当が払われない」「営業不振で解雇され、再就職先もみつからず失業手当も切れてしまった」―。長引くコロナ禍と菅政権の無為無策が人々を追い詰めているのです。

 菅首相は五輪について「安全・安心」を繰り返しますが、困窮する多くの国民にこそ「安全・安心」を確保すべきではないのか。

 ところが、中小業者が一時支援金を申請しても、書類の不備を理由に何度も拒否されるケースが相次ぎます。「不備ループだ。支援する気があるのか」「人生を否定された気持ちになる」と批判の声があがっています。

 世論に押され、雇用を維持する雇用調整助成金の拡充や休業支援金がつくられましたが、困難に見合う補償ではありません。

 医療従事者は、国が医療機関に減収補填(ほてん)をしないため一時金が減額されたり、人員不足と過重労働で、やむなく退職する人が出ています。「もう使命感だけでは持たない」と訴えています。

 貧困と格差の拡大などコロナ禍で浮き彫りとなった日本社会の問題点の解消も先延ばしにされています。

 コロナ禍は、非正規労働者やフリーランス、女性や外国人など弱い立場に置かれていた人たちを直撃し、貧困や差別・不平等を増幅させています。ところが、最低賃金の改定目安は昨年がゼロ、今年もわずか28円です。

 五輪開催がもたらす感染爆発が、困窮と貧困拡大に拍車をかけることは必至です。困窮者支援に取り組む、つくろい東京ファンドの稲葉剛さんは、「災害の真っ最中に大規模スポーツイベントをやる国がどこにあるのか」と指摘します。今からでも五輪は中止すべきことは明らかです。

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 「五輪より命を守れ」「今からでも五輪は中止を」の声は止まることはありません。

 国民の声も憲法も無視する政治の転換を求めてきた国民は、菅政権になってその思いをいっそう強めているからです。苦しむ国民を置き去りにして五輪開催に固執する限り、国民との矛盾をいっそう深めざるをえません。


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