2021年6月12日(土)
きょうの潮流
彼らの存在を知ってほしい―。重い病気や障害があり、医療的なケアが欠かせない子どもたち。その数は全国でおよそ2万人とされ、年々増えています▼もっと学校に行きたい、勉強したいという子ども。社会から孤立し、休みのない介護に疲弊する親。そうした家族を支援する法律が全会一致で成立しました。努力義務だった国や自治体の支援策を「責務」として明文化。家族の負担を減らしケア児を安心して育てられる体制を求めています▼いま、注目されている絵本があります。脳神経の難病で幼いころから入退院をくり返す少女の作文をもとにした『二平方メートルの世界で』。病院のベッドで見たり、聞いたり、感じたりする心の風景を描きました▼つづったのは札幌市の小学5年生、前田海音(みおん)さん。家族への思い、入院中の孤独感、あきらめそうになる気持ち。叫びたい言葉をのみ込んできたある日、ベッドのテーブルの裏に書かれたメッセージを見つけます▼それは、同じテーブルを使った「仲間」からの励ましでした。「ひとりじゃないよって」。この作文を本にしたいと編集者が依頼したところ、彼女から手紙が届いたといいます。「病気と生きる仲間がいること、いたことを、わたしが代表して伝える役割なのかなと覚悟を決めました」▼コロナ禍で改めて実感したいのちの重みを、一人ひとりが大切にされる社会へとつなげたい。海音さんもまた、誰かに届くかもしれない言葉を心に刻みこみます。「わたしらしく生きていく」