2021年5月29日(土)
きょうの潮流
東京ドーム9個分の集落。中心には直径1メートルの栗の木の柱に支えられた建物があり、神殿とも物見やぐらともみられています▼多いときには数百もの人びとがくらし、栗の実などを大切な食料にしていました。彼らは実を食べるだけでなく、いくつもの植物を栽培し、食料を蓄えていたと考えられています。縄文時代の生活や自然環境、ムラの様子を今に伝える青森市の三内丸山(さんないまるやま)遺跡です▼日本最大級の三内丸山をはじめ、北海道・北東北の17の縄文遺跡群が世界遺産への登録にふさわしいとユネスコから勧告を受けました。7月に正式登録が決まれば紀元前の遺跡としては国内初です▼水田や家畜なしに自然の資源を巧みに利用することで、非常に長期にわたって持続してきた。考古学者がそう位置づけるように、1万年以上つづいた縄文時代は独自の文化として世界にも知られています。それは現代の生活の礎となる優れた技術と豊かな精神世界をもち、温和で協調的な成熟した社会だったといわれるほど▼3年ほど前には縄文ブームも起きました。土器や土偶を集めた展覧会が各地で人気を博し、書店には関連本が並びました。ゆっくりした生き方や、自然を大切にしてともに生きる姿が共感を呼んだのではないかと▼争いを好まなかったという縄文人。亡くなった考古学者の佐原真さんは、日本での集団と集団の戦争は農業が始まった弥生時代からだと語っていました。そんなことにも思いをめぐらせながら、先人のくらしや文化にふれたい。