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2021年5月26日(水)

メディアに問う

「五輪中止」大手紙はなぜ言わぬ

 夏の東京五輪・パラリンピックにたいし「中止・延期を」の声の広がりがとまりません。五月に実施されたマスコミ各社の世論調査はなべて五輪中止・延期が圧倒的です。「朝日」は今夏開催14%(以下同)、再延期40、中止43で8割超が中止・延期。「毎日」は海外無観客で開催20、国内無観客13、再延期23、中止40で中止・延期が63。「読売」は観客制限で開催16、無観客23、中止59で中止が6割。共同通信も観客制限12、無観客25、中止59で中止が6割を占めました。ここまで明確な世論が突き付けられても、菅政権は「安心・安全の大会を実現する」と今夏開催に固執しています。

地方紙の社説 中止判断迫る

 この姿勢に、各紙社説も、「開催ありき 破綻あらわ」(朝日)「『安全・安心』の根拠見えぬ」(毎日)「首相は国民を見ているか」(新潟)など、開催強行へひた走る政権へ厳しい視線を向けてきましたが、23日付「信濃毎日」は「政府は中止を決断せよ」と開催中止を迫る社説を掲載しました。これを機に、25日には「理解得られぬなら中止を」(西日本)「強行すれば首相退陣だ」(沖縄タイムス)と五輪中止の判断を迫る社説が相次いでいます。

 こうした地方・ブロック紙の動きに対し、朝毎読といったいわゆる大手紙―政権寄りの産経、読売だけでなく日ごろ政権批判の強い朝日、毎日までが、五輪の是非について明確な見解を示していません。

不作為は既成事実への屈伏

 これに、なぜなのか?と痛烈な疑問を示したのが、「朝日」14日付の「山腰修三のメディア私評」でした。「五輪開催の是非 社説は立場示せ」、それをしないのは「ジャーナリズムの不作為」だとの見出しで慶応大学教授の山腰氏は、「朝日」社説が「開催すべし」とも「中止(返上)すべし」とも明言しておらず、「朝日の立場が明確に見えてこない」「それは自らの言論で現状を打開する意志を放棄した『既成事実への屈伏』にほかならない」と指摘。「『不作為』を続ける主流メディアは、大会開催の担い手と同じ『向こう側』の陣営と見なされてもおかしくない。メディア不信が高まる要因にすらなりうる」と警告しました。

 緊急事態宣言下で「安全・安心な開催」が可能か、医療体制が取れるのか、日本が変異株のルツボになるのでは。そもそもパンデミック状態で公平な大会となるのか。こうした疑問に立つなら、「五輪中止を」の社説を掲げるのが筋でしょう。同論評を掲載した「朝日」は、25日時点でなお是非を明確にした社説を掲載していません。「『開催ありき』の姿勢が随所に不信と破綻を生んでいる」(12日付社説)と政権を批判していますが、メディアの「不作為」もまた問われています。

 (近藤正男)


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