しんぶん赤旗

お問い合わせ

日本共産党

赤旗電子版の購読はこちら 赤旗電子版の購読はこちら
このエントリーをはてなブックマークに追加

2021年5月21日(金)

主張

土地利用規制法案

国民監視の違憲立法は廃案に

 菅義偉政権が今国会での成立を狙う土地利用規制法案が衆院で審議入りしています。法案は、政府が安全保障上重要とする全国の米軍・自衛隊基地などの周辺と国境にある離島に暮らす全住民を監視対象にし、土地・建物の利用を中止させることを可能にします。

政府に判断を白紙委任

 法案によると、内閣総理大臣は、米軍や自衛隊の基地、海上保安庁の施設、原発など「重要施設」の周囲約1キロと国境離島を「注視区域」に指定し、区域内の土地・建物の所有者や賃借人などすべての住民を調査します。その結果、「重要施設」や国境離島の「機能を阻害する行為」やその「明らかなおそれ」があれば、利用中止の勧告・命令を行います。「注視区域」のうち特に重要とみなすものは「特別注視区域」に指定し、土地・建物の売買に事前の届け出も義務付けます。

 政府は、法案提出の口実として、北海道千歳市や長崎県対馬市の自衛隊基地周辺の土地を外国資本が購入したことなどを挙げています。しかし、このことが一部メディアで取り上げられるようになったのは十数年も前のことです。

 防衛省は2013年度から20年度にかけて2度にわたり、全国約650の米軍・自衛隊基地の隣接地を対象に、約6万筆、8万人近くの所有者らを調査しています。外国人の所有とみられる土地が7筆確認されたものの、「これまで防衛施設周辺における土地の所有等により自衛隊や米軍の運用等に具体的に支障が生じるような事態は確認されていない」(4月15日の参院外交防衛委員会、土本英樹防衛省整備計画局長)としています。法案の必要性が存在しません。

 法案の重大な問題は、「どこで誰をどのように調査・規制するのかという核心部分をすべて政府に白紙委任している」(5月11日、衆院本会議、日本共産党の赤嶺政賢議員)ことです。「注視区域」や「特別注視区域」をどういう基準で指定するのか、「重要施設」や国境離島の「機能を阻害する行為」やその「明らかなおそれ」をどう判断するのか、住民にどんな調査・規制を行うのか具体的なことは法案にまったく書かれておらず、政府の裁量任せです。

 調査の範囲が住民の職歴や思想信条、家族・交友関係にまで広がるおそれや、沖縄県の辺野古新基地建設に抗議する座り込みなどの活動も規制の対象になる危険があります。

 政府は「土地等の利用に関連しない思想信条等に関わる情報を収集することは想定していない」「単に座り込みを続けている場合など、重要施設の機能を阻害する明らかなおそれがない態様で行われているものについては、勧告・命令の対象となるとは考えていない」(同、小此木八郎領土問題担当相)と答弁しています。しかし、法案にそれを担保する規定はありません。

基本的人権踏みにじる

 基地周辺住民は軍用機の事故や爆音、環境汚染、軍関係者の犯罪などの被害に苦しめられています。特に沖縄の住民は米軍の占領により住んでいた土地を奪われ、基地周辺での暮らしを余儀なくされてきました。そうした住民を監視対象にするなどもってのほかです。

 法案は憲法の平和主義や基本的人権を踏みにじる違憲立法であり、廃案にすべきです。


pageup