2021年5月12日(水)
改憲許さぬたたかいさらに
国民投票法改定案 衆院可決
「(改憲の)手続きを議論することは、手続きの前提となる憲法改正の原案をどのようにつくっていくか、憲法改正の議論をさらに進めていかなくてはいけないという意味で、さらに憲法論議が活発になる前提ができた」
自民党の新藤義孝衆院憲法審査会筆頭幹事は、法案の衆院通過を受けて記者団にこう明言しました。自衛隊明記の9条改憲を含む「改憲4項目」の議論を進める狙いをあからさまに語っています。
菅義偉首相は国民投票法案の成立について「憲法改正に関する議論を進める最初の一歩」(3日、改憲派の憲法集会)と位置づけました。新藤氏は、今後の審査会での議論の進め方について、改憲議論と国民投票法の議論を「どちらかが先とか、一つずつ終わらせたら次に進むのではなく、常に二つの論点は進めていかないといけない」とも語りました。
「呼び水」として
もともと国民投票法案は、安倍晋三前首相が2017年5月に自衛隊の9条明記の改憲を提起するもとで、改憲論議を進める「呼び水」として提出されたもの。国民投票法改定案の衆院通過で、改憲勢力は9条改憲論議の推進へ執念をむき出しにしています。
自衛隊明記の9条改憲は、自衛隊を憲法上の存在に格上げすることで、違憲の疑いを逃れるための「集団的自衛権行使はできない」などの制約を廃し、海外での無制限の武力行使を可能にするものです。9条2項の戦力不保持規定の空文化が狙いです。
いま、自衛隊明記の9条改憲案は新たな危険な段階にあります。
米中対立が激化し、自衛隊が米国の戦争に巻き込まれる危険が強まっています。4月の日米共同声明では「台湾海峡の平和と安定」を日米同盟強化の文脈で強調。台湾有事に自衛隊が「コミット」する方向が合意されました。
「台湾有事」において米軍の軍事行動に自衛隊が加担する根拠は、2015年の安保法制=戦争法です。重要影響事態や存立危機事態を認定し、自衛隊が後方支援や集団的自衛権=武力行使に踏み出す危険があります。そうなれば沖縄や南西諸島が戦場となり破滅的事態となることは明白です。
武力行使が可能
自衛隊を憲法に明記することで、安保法制も含め、自衛隊の海外での武力行使を広く可能にすることが狙いなのです。
国民はこのような9条改憲を求めておらず、その議論の促進、実施のための国民投票法改定など求めていません。軍事対軍事の危険な悪循環ではなく、日本には9条に基づく平和的外交的解決を図る努力こそ求められます。
参院での審議を国民の世論と運動で包囲し、国民投票法改定案の強行を許さないたたかいを急速に広げるときです。(若林明)