2021年5月12日(水)
主張
「赤木ファイル」
「森友」解明へ全てを明らかに
学校法人森友学園への国有地の異常な安値での払い下げをめぐり公文書の改ざんを強いられ、自死した近畿財務局職員、赤木俊夫さんが経緯を記したとされるファイルについて、国が存在を認めました。俊夫さんの妻、雅子さんが「真実が知りたい」と起こした訴訟の中で裁判所の求めを受け、国が6月23日の口頭弁論には提出すると回答しました。一部を「黒塗り」にするといいますが、真相解明が妨げられることになってはなりません。財務省は「赤木ファイル」を全面的に開示すべきです。
安倍首相の答弁に合わせ
「森友」疑惑は、大阪府豊中市内の国有地が、小学校開設のために森友学園に約8億円も値引きされて売却されたことが発覚し、大問題になったものです。安倍晋三首相(当時)の妻、昭恵氏が一時同校の名誉校長を務めていました。安倍首相は「私や妻が関与していれば首相も国会議員も辞める」と国会で答弁(2017年2月)し、直後から公文書の廃棄や改ざんが行われ、官僚の虚偽答弁が繰り返されました。
財務省は、18年6月に調査報告書をまとめ、当時の財務省理財局長だった佐川宣寿・元国税庁長官が改ざんの「方向性を決定づけた」ことなどを認めました。しかし、指示の具体的な内容や、背景については明らかにしていません。
改ざんを強要された俊夫さんは、苦しみ抜き、18年3月に自ら命を絶ちました。雅子さんは20年3月、佐川元局長と国に損害賠償を求める訴訟を起こしました。20年10月には雅子さん側が、改ざんの経緯を記録したファイルの存在を俊夫さんの元上司が雅子さんに語った音声データを提出し、今年2月にはファイルの提出を命じるよう裁判所に求めました。大阪地裁は今月6日までにファイルの存否について文書で回答するよう、国に促していました。
財務省が存在を認めたのは、改ざんが時系列でまとめられた文書や理財局と近畿財務局との間でやりとりされたメールなどです。提訴から1年以上もファイルの有無さえ回答しなかった国の隠ぺい体質が厳しく問われます。
国側は、「赤木ファイル」は個人的に作成したもので行政文書ではないと主張しています。しかし俊夫さんが職務上作成したものは、決して「個人的」なものではなく、公文書といえるものです。公文書は民主主義の根幹を支える国民の共有財産です。
財務省は「黒塗り」の範囲は「できる限り狭いものとする」としていますが、国会での虚偽答弁や公文書の廃棄や改ざんを繰り返した経過から見ると、多くが非開示にされるのではないかとの不安は払しょくされません。財務省は国民に説明責任を果たすべきです。
国会にも提出、真相究明を
森友問題では、安倍政権による国会での虚偽答弁は139回にも上ります。行政を監視する国会に対する重大な背信行為です。
麻生太郎財務相は10日、「赤木ファイル」の存在はかなり前から知っていたと国会で述べました。それならなぜ、これまで野党が再三、国会への提出を求めたのにこたえなかったのか。裁判に提出されることが決まった以上、国会提出を拒む理由は全くありません。「赤木ファイル」を国会にも提出し、真相を解明すべきです。