2021年5月5日(水)
主張
「こどもの日」
耳を傾け一緒に未来つくろう
きょうは、「こどもの日」です。新型コロナ感染拡大で子どもたちの生活が一変して1年を超えますが、我慢の日はなかなか終わりがみえません。子どもたちはさまざまな悩みを抱え、傷つき、戸惑いながらも懸命に毎日を過ごしています。子どもの思いを受け止め、一緒に考え、希望ある未来をつくっていく姿勢が、おとなに、そして何より政治に問われます。
権利を知って知らせる
長野県在住のある父親(55)は昨年、中学2年の娘が3年の修学旅行中止にショックを受け、「3年がかわいそう。私たちも来年行けないのかな」と悲しむ姿に胸を痛めました。周囲の子どもの異変にも気づきました。コロナにおびえ外で体を動かすのをためらう子どもがいました。家族がコロナに感染し、「近づくな」と差別される子どもがいることを知りました。
「何とかしないと」。そんな時、父親は絵本『子どもの権利と新型コロナ』に出合いました。仏教大学の長瀬正子准教授が知人らと昨年、自費出版した本です。
国連・子どもの権利委員会が昨年4月発表した「新型コロナ感染症に関する声明」の内容を紹介した一冊です。声明は、子どもの権利保護の緊急性を各国に提起したもので、守られるべき権利を具体的に記しています。絵本は、その権利をやさしい文とあたたかいタッチの絵で描きます。「休む権利」は、クマのぬいぐるみの横に座る女の子の絵を添えて、「ぼーっとするような、ゆったりした時間も大切」などと説明します。
前出の中2の娘は絵本を読んで「コロナをみんなで学んで話して修学旅行について決められたらいいな」と笑顔になりました。父親は、子どもに「知る権利、意見を表明する権利、学ぶ権利、遊ぶ権利、休憩する権利」があることを知ってもらいたいと痛感し、絵本を50冊注文し、居住する市内の中学校全クラスと職員室に贈呈し、説明する行動に取り組みました。
国連・子どもの権利委員会の声明は、コロナ禍の緊急事態や都市封鎖などを宣言した国で、多くの子どもが身体的、情緒的、心理的に重大な影響を受けていることを警告し、各国に子どもの権利を尊重・保護する措置を求めています。
文化・芸術活動を大切にすること、正確な情報をやさしく知らせること、政策を決める時に子どもの意見を聞き、考慮される機会を設けることなどが盛り込まれています。栄養ある食事など貧困も課題です。オンライン学習が不平等や格差を悪化させないようにすることも提起しています。日本でも立ち遅れている課題ばかりです。
心を寄せた支援を急ぎ
国立成育医療センターが2月に発表した「コロナ×こどもアンケート」(924人が回答)では中等度以上のうつ症状の子どもは、小学4~6年生で15%、中学生で24%、高校生では30%もいました。「コロナを理由に何でもかんでも中止にしないで」(小5)、「電車通学がこわい」(中1)、「友達ができない」(高2)などの苦悩の声が寄せられました。機敏にSOSをキャッチし、心を寄せた解決の取り組みが急務です。
きょうは1951年に日本国憲法の精神にもとづく児童憲章が制定されて70年です。子どもは「人として尊ばれる」と掲げた憲章の原点を、忘れてはなりません。