2021年4月10日(土)
きょうの潮流
「なによりも第一に私は人間です!」。連続テレビ小説「おちょやん」の主人公が叫んでいました。戦争がもたらした理不尽さにあらがうように▼「これからは(社会というものを)一生懸命わかろうと思います。社会と私とどちらが正しいのか、決めなくてはなりませんから―」。暗唱したセリフは役者をめざす原点となったイプセン「人形の家」の一節。夫から良き妻、良き母を求められた女性がひとりの人間としてめざめていく戯曲です▼敗戦の焼け野原のなか、同じように声を上げる姿がありました。初めて認められた女性の参政権。1946年4月10日、戦後初の衆院選で約1380万人の女性が最初の1票を投じ、39人の女性国会議員が誕生。それは政治に新風を吹き込みました▼それから75年。いま、コロナ禍のもとで“生理の貧困”が大きな問題になっています。学生の5人に1人が経済的な理由で生理用品に苦労している実態。体への負担にくわえ、精神的な苦痛も受けています▼ことは女性の問題ではなく、人間の尊厳にかかわる人権の問題。社会全体が向きあうべきなのに、これまで男性の視点でつくられた法や政治のなかで生きていくための必需品が見過ごされてきました▼世界ではおかしいと立ち上がった女性たちが行政を動かすことに。日本でも若い世代の訴えが自治体の支援をひろげ始めています。先駆者は呼びかけます。人間としての貧困をただすため、声を上げつづけよう。ひとに優しい平等な世をつくるために。