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2021年4月2日(金)

主張

土地調査規制法案

国民監視と人権侵害許されぬ

 菅義偉政権は、米軍や自衛隊の基地周辺などの土地・建物の所有者らを調査し、その利用を規制する「重要土地等調査規制法案」を閣議決定し、国会に提出しています。法案は、政府に基地周辺住民の個人情報を収集する権限を与え、思想調査も可能にしかねません。米軍基地が集中する沖縄では「新たな治安維持法と言うべき危険な法律だ」(琉球新報3月27日付)と厳しい批判が上がっています。

反対運動抑え込み

 法案は、米軍や自衛隊の基地、海上保安庁の施設、原子力発電所などの「重要施設」と国境にある離島について、それぞれが果たしている機能が阻害される事態を防ぐのが目的とされています。

 法案によると、内閣総理大臣は、「重要施設」の周囲おおむね1キロと国境の離島を「注視区域」、これらのうち司令部を置く基地など特に重要とみなすものを「特別注視区域」に指定します。その上で、これら区域内にある土地・建物の所有者や賃借人などの情報を集め、必要なら利用状況に関する報告を求めることもできます。

 政府は、調査事項は「氏名、住所、国籍等」と「利用状況」、調査方法は「現地・現況調査」、「不動産登記簿や住民基本台帳等の公簿収集」などと説明していますが、それらに限られる保証はありません。思想信条や所属団体、職歴、家族・交友関係、海外渡航歴などが調べられ、憲法が保障するプライバシー権や思想・良心の自由が侵害される恐れがあります。

 法案は「個人情報の保護に十分配慮」するとしていますが、努力規定にすぎず、恣意(しい)的運用に対する歯止めにはなりません。

 調査の実施機関についても限定がなく、公安調査庁や警察、自衛隊が行うことも可能です。基地や原発に反対する住民の監視、反対運動の抑え込みにつながる危険もあります。前出の琉球新報は「国に調査されるかもしれないというだけで、政府への批判的な言動を萎縮させ、施設から起きる騒音や環境汚染に抗議することをためらう空気を生むだろう」と指摘しています。

 調査の結果、「重要施設」や国境の離島の「機能を阻害する行為」やその「明らかなおそれ」がある場合、内閣総理大臣は利用中止の勧告・命令を行うことができます。命令に応じなければ2年以下の懲役、200万円以下の罰金が科されます。「特別注視区域」では、一定面積以上の売買について、氏名、住所、国籍、利用目的などの事前の届け出が義務付けられます。個人の財産権、経済活動の制約にもなります。

徹底審議で廃案に

 自民党はこれまで、自衛隊や米軍の基地周辺の土地が外国資本に買い占められると、安全保障上問題があると主張してきました。

 しかし、防衛省は全国約650の「防衛施設」に隣接する土地を調査した結果、「現時点で、防衛施設周辺の土地の所有によって自衛隊の運用等に支障が起きているということは確認をされていない」(2020年2月25日、衆院予算委員会第8分科会、山本ともひろ防衛副大臣=当時)としていました。法案の必要性を裏付ける根拠はありません。

 国民監視を強化し、基本的人権を踏みにじる法案は、徹底審議で廃案にする必要があります。


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