2021年3月5日(金)
東日本大震災・原発事故から10年
志位委員長と宮城の市民らの懇談(詳報)
人間らしい暮らし保障の政治を
東日本大震災と東京電力福島第1原発事故から10年を迎えるのを前に、3日に行われた日本共産党の志位和夫委員長、高橋千鶴子衆院議員と宮城県の住民や市民団体の代表者とのオンライン懇談の詳報を紹介します。
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現状と課題
志位氏は、「震災10年にあたり現状と課題をお聞きし、政府に対応を求めたい」として、次の4点についての実情のほか、国の政策に対する要望などを尋ねました。
(1)県による災害公営住宅に暮らす被災者の健康調査(2019年)でも64・9%が病気があることを訴えるなどのもとで、被災者の心身のケア・命と健康を守る問題(2)被災者生活再建支援法の上限の拡充とともに、在宅被災者に対する支援をどうやって進めるかという住まいの再建の問題(3)大震災と大不漁とコロナ危機の三つの打撃が加わり水産特区の押しつけが矛盾を広げるなどのもとでの生業(なりわい)の再建の問題(4)県による巨大防潮堤の押しつけや水道事業や空港などの民営化、水産特区、東北電力女川原発再稼働容認など復興に持ち込まれたゆがみの問題。
東日本大震災復旧・復興みやぎ県民センターの小川静治事務局長は、宮城の特徴として家屋修繕が多く、被災者が住宅再建の手段として災害救助法による応急修理制度を使ったため、半壊住宅に不自由な状態で住み続けざるをえない在宅被災者が生まれることにつながっていると指摘しました。
被災者生活再建支援法について「実際の被害を回復するには支援金額自体が根本的に不足している」と強調。「住宅の被害を我慢している多くの方が救済されていない。住宅再建支援制度を充実させ国が全面的にバックアップする決意を示すことが被災者を励ますことにつながります」と訴えました。
支援の実態
在宅被災者の支援と調査に取り組む一般社団法人「チーム王冠」の伊藤健哉代表理事は、「家が傾いたり、生活基盤の風呂やトイレが使えなくなったりしても、あくまで判断基準は家がどう壊れたかという視点で罹災(りさい)判定が出ているので被災者の被災実態と必ずしも合致しているわけではない」と指摘。「国や県、自治体が被災実態を全く調査していない。実態を知らなければ施策が打てるわけがないので早急に調査してほしい」と訴えました。
被災者の医療費負担免除が終わるなか生活保護を頼る人がたくさんいるのに支給を打ち切られているとし、被災者一人ひとりの被災状況に合わせた支援策を専門家と連携して実施していく「災害ケースマネジメント」の取り組みが必要だと強調。復興庁の「心の復興事業」も被災者には必要な事業だとして継続を要望しました。
宮城県民主医療機関連合会の矢崎とも子副会長は、災害公営住宅訪問調査で住居環境は良くなったはずなのに健康状態が悪化している人が3割以上おり、医療費の問題で受診抑制が起きていると紹介。2割ほどが入居後亡くなった家族がいると答えているとし、「独居者へのケアをきちんとしなければ孤独死が増えていくのではないか」と懸念を示しました。
病気、収入や生活費、将来の家賃が被災者の「三大心配事」になっていると紹介。3年前の調査と比較して、経済的に困窮している人ほど健康状態が悪くなり、うつ傾向になる人の割合が高く、受診抑制が起きていると述べました。コロナ禍もあり収入が減る一方で家賃が増えるため、生活費や食費を抑え、冠婚葬祭に行かないために近所付き合いをやめる人が増えていると述べ、「どう援助の手を差し伸べるか考えなければならない」と語りました。
日本共産党宮城県議団の三浦一敏団長は、災害公営住宅への入居3年後から月収15万8000円以上の世帯が「収入超過者」とされて割り増し賃料を徴収されることで、家賃が大幅に上がり退去せざるをえなくなる問題を指摘。水産業について、グループ補助金で再建したものの、コロナと消費税のダブルパンチに見舞われ苦境にあえいでいると紹介し、「グループ補助金の返済期限を延ばしてほしいというのが切なる願いです」と訴えました。水産特区では経営が困難で後に続く業者もないと指摘しました。
また、市民と野党の共闘を土台に県議会で4会派20人で脱原発県議の会をつくり、原発再稼働ストップのために住民投票などを求める署名も集めた活動を紹介。「再稼働を止めるためにも総選挙で国政を根本的に変えることが必要だ」と述べました。
心身のケア
発言を受けて高橋氏は、復興庁が示した第2期の復興創生期間後における東日本大震災からの復興の基本方針案について「22ページ中、津波被災地についてはたった5ページしかない。いかに位置づけていないか」と批判。県が健康調査を打ち切ることについて「心のケアが必要な人を見つけなければ心のケアをやるといっても意味がない」と述べ、継続を求めたいとしました。
志位氏は在宅被災者の問題について、風呂などの修理に必要な金額を問いました。伊藤氏は「ケース・バイ・ケースですが50万円ほど」と回答したうえで、「応急修理制度の目的であるライフラインの回復、健康で文化的な最低限度の生活を送るために必要な補修を考えれば、支給は300万円程度が妥当だ」と述べ、「何とか対処していただきたい」と語りました。
志位氏は、被災者の心身のケアの重要性について被災地の医療現場から国に求めることを尋ねました。矢崎氏は「各地で災害が起きているなか、困っていてもこれ以上助けてくれと言えない人がいる」と述べ、こうした人や孤独死が増えるなか1人で生活している人たちにどう寄り添えるかが課題だと語りました。
「出された意見をしっかり受け止めて頑張っていきたい」と応じた志位氏は「被災者生活再建支援法上限の引き上げとともに対象を広げ、自治体の制度ともセットできめ細かな支援の手が届くような制度にしていく方向で力をつくしたい」と表明しました。また、国の責任による在宅被災者の実態調査や「災害ケースマネジメント」の法制化、グループ補助金の返済延長なども求めていくとし、「苦しみに寄り添いながら人間らしい生活を保障する。住まいを保障する。その取り組みを国にしっかり求めていきます」と力を込めるとともに、「国の政治を変えることが必要です。何としても政権交代を実現しましょう」と呼びかけました。