2021年2月28日(日)
主張
接待で相次ぐ処分
癒着を広げた政治の責任重大
菅義偉首相の長男・正剛氏が勤務する放送関連会社「東北新社」からの接待で総務省幹部ら11人が処分されたのに続き、農林水産省の幹部6人が鶏卵生産会社「アキタフーズ」からの接待で処分されました。いずれも利害関係者の接待を禁じた国家公務員倫理規程に違反したものです。官庁の主要幹部が立て続けに接待問題で処分されたことは、菅政権下のモラル崩壊の深刻さを浮き彫りにしています。行政がゆがめられた疑惑は一層深まっています。処分だけで幕引きすることは許されません。徹底究明が不可欠です。
行政ゆがめた疑惑深まる
アキタフーズ問題では、同社前代表から現金500万円を受け取った吉川貴盛元農水相(議員を辞職)が収賄罪で在宅起訴されています。元農水相には、家畜飼育の国際基準が業者の不利にならないようにすることや日本政策金融公庫からの業界への融資拡大で便宜を図った疑いが持たれています。
処分された枝元真徹事務次官ら農水省幹部6人へのアキタフーズ側の接待は、吉川元農水相が同席していました。同社からの現金提供が発覚し内閣官房参与を辞職した西川公也元農水相らが加わったこともありました。同社の接待は、今回処分されたケース以外もあると指摘されています。政官業の癒着の根深さを示しています。
ところが農水省は、吉川元農水相の収賄事件についても、幹部接待問題でも、行政にどんな影響を与えたのか明らかにしません。隠蔽(いんぺい)姿勢を即刻改めるべきです。吉川元農水相は昨年の自民党総裁選で菅氏の選対事務局長を務めるなど政権中枢にいた人物でもあり、疑惑はあいまいにできません。
東北新社の総務省幹部への接待が放送行政をゆがめた疑いは、ますます濃厚です。同社も加盟する衛星放送協会の要望に沿って人工衛星の利用料の低減が図られた可能性などが国会で追及されています。総務省は幹部の処分後、検証委員会を立ち上げましたが、同省任せでは、お手盛りの調査になりかねません。正剛氏ら東北新社関係者の国会招致が必要です。
官僚の接待問題が後を絶たないことは重大です。100人以上が処分された旧大蔵省接待汚職(1998年)後に、関連業者からの接待や贈与などを原則禁止にした国家公務員倫理法が制定され、同法に基づく倫理規程が2000年に施行されましたが、事実上骨抜きになっていることを、今回の事態は改めて示しています。
総務省でも農水省でも接待漬けの背景を徹底究明するとともに、関係者を厳しく処分することが重要です。総務審議官の時に一晩で1人7万4000円超の接待を受けた山田真貴子内閣広報官を続投させる菅政権の姿勢は大問題です。山田氏は辞任しかありません。
政権中枢の姿勢問われる
問われるのは菅首相ら政権中枢の責任です。安倍晋三前首相の「森友」「加計」「桜を見る会」をはじめとする一連の国政私物化疑惑では、官僚が首相の意向を忖度(そんたく)し、情報隠蔽や国会での虚偽答弁など、政治と行政のモラルを崩壊させました。官房長官時代などに人事権をふるい官僚を従わせた菅首相の手法が、官僚組織に与えた負の打撃も計り知れません。「安倍・菅政治」を一掃し、公正・公平な政治を取り戻すことが必要です。