2021年2月25日(木)
主張
総務省接待の処分
疑惑の徹底解明はこれからだ
菅義偉首相の長男・菅正剛氏が勤務する放送事業会社「東北新社」から総務省幹部らが接待されていた問題で、同省は職員の処分を決めました。接待された幹部・同省出身者ら13人のうち11人について国家公務員倫理規程違反と認定し、減給の懲戒処分などにしました。しかし、会食に応じた動機、接待が横行した背景、行政に及ぼした影響などについては、依然として闇に包まれています。省内に検証委員会を設置するとしていますが、総務省任せにはできません。
放送行政をゆがめたのか
総務省は、同省事務方ナンバー2の谷脇康彦、吉田真人の両総務審議官など9人の会食は、利害関係者による接待だと判断し、倫理規程違反にあたるとして懲戒処分にしました。他の2人は訓告と訓告相当にしました。ほとんどが放送行政を担当する部局に関係していました。10人以上の幹部職員が接待で処分されることはまさに異常事態です。同省のモラル崩壊は極めて深刻です。
総務審議官時に1人1回7万円超の高額接待を受けた山田真貴子・内閣広報官は総務省を退職していることから、同省の処分対象になりませんでした。給与の一部を自主返納し、菅首相は広報官の続投を容認しました。他の幹部職員と比べ桁違いの接待を受けたことへの国民の不信と疑念は募ります。山田氏は25日に国会に招致されます。事実を包み隠さず話すことが最低限の責任です。
総務省の現段階の調査では、幹部らが東北新社からの接待に漬かった背景は不明のままです。同省が許認可権を持つ衛星放送のチャンネルなどについて接待の席で、どんなやりとりがあったのか。接待によって行政がゆがめられていないのか。当初放送事業が話題になったことは「記憶にない」としていた総務省幹部の釈明は、『週刊文春』の音声データ報道で完全に破綻しました。これ以上事実を隠ぺいしてはなりません。
幹部らは同社以外の放送事業会社からは接待はなかったとしています。正剛氏が勤務する東北新社を「特別扱い」していたことは疑いの余地はありません。
解明が不可欠なのは、菅首相の「威光」との関係です。菅氏が総務副大臣と総務相を務めた時からの絶大な影響力はいまも続いているとされます。判明したのべ39回の接待のうち正剛氏は21回同席していました。接待された総務省の少なくない幹部は、菅氏から重用されてきたことが指摘されています。総務省幹部らが首相の意向を「忖度(そんたく)」して接待を重ねていた疑いは強まるばかりです。
首相は説明責任を免れぬ
正剛氏が主要な総務省幹部と面識ができたのは、首相が総務相時に正剛氏を大臣秘書官に起用したことが契機でした。東北新社創業者と正剛氏を引き合わせたことも首相は認めています。創業者と同郷で20年近い付き合いだと国会で答弁しています。同社から500万円の政治献金を受けています。不可解な点は尽きません。首相は「おわび」を言うだけでなく、解明に責任を果たさなければなりません。首相の長男がからんで行政がゆがめられた疑惑を絶対にあいまいにできません。正剛氏など東北新社関係者や総務省の幹部ら全員を国会に招致し、徹底追及することが急がれます。