2021年2月24日(水)
「N高政治部」 志位委員長の特別講義(4)
日本共産党がめざす社会像
「国民が主人公」といえる日本つくる
オンラインで参加した25人の生徒が5グループに分かれ、志位委員長に質問を投げかけました。
生徒 チームAの質問です。共産党は科学的社会主義をめざしておられますが、実現の難しさを踏まえ、どのように実現しようとしているのか。また、科学的社会主義を実現して何を解決し、また何を助けたいのかお聞かせください。
階段を上るように一歩一歩進む、選挙で示される国民多数の意思で進む
志位 私たちは、社会主義・共産主義をめざしています。ただ、一足飛びにそれを実現するという立場ではありません。
私たちは、人間の社会は――日本社会も含めて、一段一段、階段を上るように、直面するいろいろな課題を解決しながら、一歩一歩、進んでいくという立場に立っています。
そして、この階段を上るさいに、政治のリーダーが勝手にみんなをひっぱっていくというのでなくて、主権者である国民の多数が選挙で「上ろう」という審判を下して、多数がしっかりと合意をして、次の階段を上ろうという立場に立っています。
まず資本主義の枠内で、「国民が主人公」の国をつくる民主主義革命を
志位 そう考えますと、私たちは、いまの日本ですぐに社会主義にすすむというせっかちな方針ではありません。
それでは何を変えるのかといいますと、まずは資本主義の枠内で、本当に「国民が主人公」といえる国をつくるための民主主義革命をやろうというのが私たちのプログラムなのです。
もちろん革命と言っても恐ろしい話ではありません。民主的な選挙での審判をつうじて行うというのが、私たちの大方針です。
革命というのは、世の中の仕組みをガラッと変えようということですが、私たちは、日本の社会の二つのゆがみを正していこうということを、党の綱領に掲げています。
「アメリカいいなり」のゆがみを正す――対等・平等・友好の日米新時代を
志位 一つは、あまりにもひどい「アメリカいいなり」の政治のゆがみを正すということです。
核兵器禁止条約が、2017年7月に国連会議で採択され、今年1月に発効しました。私も17年の国連会議に参加しましたが、大きな喜びです。この条約によって人類の歴史上初めて核兵器が違法になりました。画期的なことです。ところが日本政府は、アメリカとの関係が足かせになって、この条約に背を向けています。被爆国の政府として、とても恥ずかしいことではないでしょうか。被爆者からも強い批判がありますね。これでいいのかという問題を考える必要があると思います。
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それから沖縄では、辺野古で米軍新基地を無理やりつくっています。沖縄県民が、何度も何度も選挙で「ノー」の審判を下しているのにやめようとしない。民主主義の国でこんなことが許されるでしょうか。
こうしてアメリカとの関係で、対等・平等とはほど遠い、いろいろな問題があります。
私たちは、そういう目の前の問題を一つ一つ解決しながら、こうした問題の根っこにある日米安保条約を国民多数の合意で廃棄して、安保条約の代わりに日米友好条約を結び、対等・平等・友好の日米新時代をつくることを大きな目標にしています。
世界を見ますと、軍事同盟というのは、大きくいえば解体と衰退の方向に向かっています。いまの世界で、軍事同盟が機能しているのは、日米軍事同盟、米韓軍事同盟、米・オーストラリアの軍事同盟、そしてNATO(北大西洋条約機構)ぐらいです。それ以外の、かつてあったたくさんの軍事同盟は、みんな解体・機能停止になっているのです。こういう流れにてらしても脱軍事同盟という方向にふみだすことが、当たり前ではないでしょうか。
「財界中心」のゆがみを正す――人間らしい労働のルールを
志位 もう一つは、財界・大企業の横暴勝手がひどすぎる、「財界中心」の政治のゆがみを正すということです。
日本の社会は、国民の暮らしや権利を守るルールが、ヨーロッパなどに比べてもとても弱いという問題があります。弱いだけでなく、この間、重大な後退もあります。
たとえば、人間らしい労働のルールがとても弱く、後退させられてきた。非正規雇用労働者の比率は、最近の統計では全体の40%を超えました。1990年代なかごろから、財界が旗をふって、正社員を、パート、アルバイト、派遣に置き換える流れをおしつけてきました。その結果、「使い捨て」の労働が社会にあふれています。さきほどお話ししたフリーランスといった、労働者なのにその権利がまったく保障されていない働かせ方も広がっています。こんなことを続けておいていいのかということは、日本社会の大問題ではないでしょうか。
それから長時間労働が日本はひどい。ドイツなどに比べて年間500時間も多く働かされています。「過労死」が後を絶ちません。「サービス残業」と呼ばれるただ働きも横行しています。世界のなかでも、「過労死」や「サービス残業」が社会問題になるというのは、日本だけの異常な現象なのです。
こういう財界・大企業のもうけ放題をただして、人間らしい労働のルールをつくり、8時間働けば誰でもふつうに暮らせる社会をつくっていこう。これが私たちの提案です。社会保障、中小企業、税財政、環境、ジェンダー、あらゆる分野で、「財界中心」のゆがみを正す改革にとりくみたい。
憲法には「国民主権」と書いてありますね。ところが、実態は「米国主権」「財界主権」になっている。この二つのゆがみを正すことで、憲法に書いてある通りの本当に「国民が主人公」といえる民主主義の日本をつくろうというのが、直面する私たちの大目標です。
次の階段――国民多数の合意で社会主義への階段を上る
志位 この民主主義革命は、文字通りの革命的な大改革なんですけれども、それをやったうえでも資本主義という制度は続きます。
資本主義が続く限り、貧富の格差は、一定の是正がされたとしても、なくなることはないでしょう。失業者もなくなることはないでしょう。恐慌や不況もなくなることはないでしょう。環境破壊の根も絶てないでしょう。こうしたいろいろな問題は、その解決が、資本主義の次の社会に課題として残されます。
そこはやはり、次の階段を上る必要が出てくるでしょう。次の階段として、これも国民の多数の合意で、資本主義を乗り越えて、社会主義への階段を上るということを、私たちは展望しています。
共産主義の革命を実現したら、人権弾圧が行われるか
志位氏の発言をうけてAグループの生徒からさらに質問が出され、これに志位氏が答えました。
生徒 さきほど、選挙で革命をしていくという発言がありましたが、ドイツのナチ党は過半数を勝利した後にいろいろ人権弾圧を行いました。日本が共産主義の国を選挙の革命で実現した場合、思想弾圧とか人権弾圧が行われるのでしょうか。
志位 そんなことは絶対にしません。私たちは党の綱領で、社会発展のあらゆる段階で、民主的な選挙で多数を得て、一歩一歩進んでいくと明記しています。
そして、私たちが多数を得て政権についたとしても、自由や民主主義の制度を守り、充実し、発展させるということは、党の綱領で国民にかたく約束していることです。ですから、そういうことは絶対にやらないということは、ここでもはっきりお約束したいと思います。
ではなぜつぶれてしまったソ連や今の中国で、人権抑圧などが起こったのかということですが、そこには、まず歴史的な条件の大きな違いがあることを見てほしいと思います。ロシア革命も中国革命も、自由や民主主義の制度が存在しないもとで、武力革命で始まりました。問題は、そのあと、自由や民主主義の制度をつくるという努力をやらなかった。逆に指導者が「社会主義」とは無縁の間違った政策をすすめ、ひどい人権弾圧をやってきた。こういう歴史的事情があるのです。
日本では、戦後75年にわたって、憲法にもとづいてつくられた自由と民主主義の制度を多くの国民のたたかいで守ってきたという歴史的伝統があります。これはナチ党が政権を握った第1次世界大戦後のドイツとも違う。
私たちが参画する政権は、それを引き継いで先にすすむわけですから、その政権が弾圧を行うなどということは絶対にありえません。これは私たちの党の綱領で約束しているだけでなく、日本の国民が築いてきた伝統にてらしても、歴史の大逆転はおこりえない。また絶対におこさない。そこはどうか、心配しないでください。(つづく)