2021年2月23日(火)
主張
総務省の調査概要
異常な接待漬け 根本にメスを
放送事業会社「東北新社」に勤務する菅義偉首相の長男・菅正剛氏らによる総務省幹部への接待問題で、同省は調査の概要を国会へ報告しました。利害関係者からの接待を禁止した国家公務員倫理規程に違反した職員は12人にのぼり、接待は2016年からだけでものべ38回にもなることが明らかになりました。接待にどっぷり漬かった異常事態というほかありません。「放送行政はゆがめられてこなかった」(武田良太総務相)などの言い分に全く説得力はありません。これで幕引きを図るのではなく、疑惑を徹底解明すべきです。
主要な幹部がこぞって
総務省の調査概要によると、接待を受けていた官僚は、すでに明らかになっていた同省事務方ナンバー2の2人の総務審議官、前情報流通行政局長、前官房審議官の4人のほかに、8人の幹部らもいたことが新たに分かりました。接待の回数が38回と当初言われた回数をはるかに上回っていたこともあまりに深刻です。放送行政に関係する部局を中心に総務省こぞって特定業者と癒着していたことはまともな行政の姿とはかけ離れています。これ以外に山田真貴子内閣広報官も総務審議官当時に接待されていました。
国家公務員倫理規程は利害関係者から接待などを受けるのを禁止しています。幹部らが接待を受けたうえ、手土産やタクシー券まで受け取り、発覚まで同省に報告もしていなかったのは明らかな規程違反行為です。
問題は一連の接待で放送行政がゆがめられていなかったかです。22日の国会で初めて答弁した2人の総務審議官らは業界全体のことは話しても個別のことは話していないと言い訳しました。しかし、昨年12月の接待の席でBSやCS、衛星放送の認可問題が話題になっていたことは、総務省も認めざるを得なくなっています。接待の時期は東北新社の子会社「スターチャンネル」の認定更新の時期などとも重なります。倫理規程違反にとどめず、放送行政にかかわる問題としての究明が必要です。
総務省幹部は東北新社以外の事業者からは、こうした接待をほとんど受けていなかったといいます。菅正剛氏は菅首相が総務相だった06年から07年の大臣秘書官でした。接待を受けていた複数の幹部はそれ以来の付き合いだといいます。
問われるのは自ら疑惑の調査に動こうとしない菅首相の姿勢です。首相自身、総務省に強い影響力があるといわれます。首相の意向も「忖度(そんたく)」して接待に応じ、ここまでまん延させていった可能性は濃厚です。武田総務相は、行政がゆがめられたことを全面否定しますが、何の論証もありません。トカゲのしっぽ切りのような処分で幕引きすることは許されません。徹底して真相を解明すべきです。
行政の公平性に関わる
正剛氏をはじめ東北新社の関係者、総務省の幹部などを国会へ招致する時です。
首相を忖度して、首相周辺の人物のために行政がゆがめられた疑惑は、安倍晋三前政権下での「森友」「加計」などと同様の「行政私物化」の構図です。ことは行政の公平性や中立性にかかわる大問題です。菅政権の基本姿勢を正すために、正剛氏による異常な接待問題の徹底解明が不可欠です。