2021年2月6日(土)
きょうの潮流
1941年の2月1日、日本軍のなかにある謀略組織がつくられました。通称、南機関。当時イギリスの植民地だったビルマ(現ミャンマー)内の独立闘争を支援し、米英の中国補給ルートを閉じることが目的でした▼のちに建国の父と呼ばれたアウン・サンをリーダーに、独立運動に携わる青年30人がビルマから密出国。諜報(ちょうほう)・謀略活動を専門とする陸軍中野学校の出身者らに軍事訓練を受けました(『アウンサン将軍と三十人の志士』)▼太平洋戦争の勃発を機に彼らはビルマ独立義勇軍を結成。その後、独立を名目に占領した日本軍ともたたかいます。祖国解放のためにたたかった軍は、いまのミャンマー国軍の前身といわれています▼くしくも、80年前に南機関が設立されたその日に、ミャンマーで国軍によるクーデターが起きました。アウン・サンの娘であるアウン・サン・スー・チー国家顧問や大統領をはじめ政権幹部が拘束され、抗議する市民らも逮捕されています▼背景には総選挙で圧勝した政権が軍の特権を残した憲法の改正をめざしていることがあります。選挙の不正を訴え、みずからを正当化しようとする。まるで、どこかの大統領と同じような民主主義を覆すふるまいです▼独立後も続く内戦のなかで粘り強く和平や民主化の道を模索してきた国づくり。その努力が無にならぬよう、日本や国際社会は連帯して暴挙を撤回させなければ。「軍は民衆のためのものだ」。創始者アウン・サンの言葉を今によみがえらせるためにも。