2021年1月22日(金)
感染抑止の積極的方策を
三つの緊急提案
志位委員長の代表質問 衆院本会議
21日の衆院本会議で代表質問に立った日本共産党の志位和夫委員長は、新型コロナウイルスの感染抑止にむけて、PCR検査の抜本拡充、医療機関・保健所への支援拡充、自粛要請と一体の十分な補償など三つの緊急提案を行うとともに、今夏の東京五輪の開催を中止し、コロナ収束に集中するよう求めました。
PCRの抜本的拡充
国費で社会的検査を
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志位氏は、全国で爆発的感染が起こり医療崩壊が始まっているとして、菅義偉首相の責任を追及。検査を増やし感染を抑える感染症対策の鉄則を怠った上、「『Go To』事業にしがみつき、全国にウイルスを広げてしまった責任は極めて重い」と批判しました。菅首相は「適切な判断を行い、対策を講じてきた」と居直りました。
志位氏は、緊急事態宣言の際の対策は国民に努力を求めるものばかりで、「感染抑止のためにどのような積極的方策をとるのかが全く見えない」と述べ、政府がいまなすべき三つの緊急提案を行いました。
一つ目は、PCR検査などを抜本的に拡充し、無症状者を含めた感染者を把握・保護することで、新規感染者を減らすことです。
本庶佑、山中伸弥両氏らノーベル医学生理学賞を受賞した4氏が声明で「PCR検査能力の大幅な拡充と無症候感染者の隔離を強化する」ことを提言し、本庶氏が検査数は国際的に「いまだに少ない」と述べていることを紹介。「この指摘をどう受け止めるか」と迫りましたが、菅首相は全く答えませんでした。
志位氏は、広島県が広島市の特に感染者が多い地域のすべての住民と就業者を対象に、希望者に無料でPCR検査を実施する計画を発表したことをあげ、感染集中地域への大規模検査の実施を主張。東京都世田谷区をはじめ全国各地の自治体で医療機関と高齢者施設などの職員、入院・入所者への一斉・定期的なPCR検査「社会的検査」が始まっているとして、全額国費で社会的検査を行う仕組みをつくるべきだと求めました。
菅首相は、自治体の半額負担にもかかわらず「実質的に全額国の負担で検査できる」と強弁しました。
志位氏は、陽性でも病院・宿泊療養施設に入れない人が直近の政府発表で全体の6割超、4万1千人に上っていると指摘。宿泊療養施設を借り上げ、スタッフを確保した上で容体管理に万全を期し、「陽性者を保護する取り組みに全力をあげるべきだ」と訴えました。
教科書に書いてあることなぜしないのか
「現在の最大の問題は無症候感染者だ」
(日本の検査数が国際的に)「いまだに少ない。感染者の早期発見と隔離は医学の公衆衛生の教科書に書いてある。なぜ厚労省が医学の教科書に書いてあることをしないのか理解に苦しむ」
ノーベル医学生理学賞受賞者・本庶佑氏の発言(14日、テレビ朝日「羽鳥慎一のモーニングショー」)
医療機関、保健所などへ支援拡充
現場の声にこたえよ
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感染抑止に向けた緊急提案の二つ目は、医療機関と医療従事者、保健所に対する支援の抜本的拡充です。
政府が医療機関への減収補填(ほてん)を拒んできた結果、「医療機関の40%余りが冬にボーナスカット」(日本医労連の調査)、「15・4%の病院で看護師や准看護師が離職」(日本看護協会の調査)という深刻な事態に陥っています。
志位氏は「『使命感だけで働き続けることはできない』という医療現場の痛切な声にどう答えるのか」と追及。政府の支援はコロナ対応の一部病棟などに限られているとして「コロナ対応の医療体制を確保しながら通常医療の体制を維持するには、地域の医療体制全体への支援が必要だ」と述べ、すべての医療機関に減収補填など十分な財政支援を行い、医療・介護従事者には新たな慰労金を支給すべきだと迫りました。
菅首相は減収補填には一言も触れず、「現場のニーズをくみ取りながら支援している」と語るだけでした。
さらに志位氏は、保健所がパンク状態で、濃厚接触者の追跡や患者の入院先・宿泊療養先の調整に十分対応できずにいる事態に陥っていると指摘。東京都墨田区の保健所が追跡体制を8倍に増やしていることを示し、政府として保健所の臨時的な人員強化に全力をあげるとともに、抜本的な定員増に踏み切るべきだと強調しました。
菅首相は、保健師の緊急で大幅な増員が求められるにもかかわらず、今後2年間で900人とわずかな増員しか示しませんでした。
志位氏は、政府がコロナ禍のもとでも病床削減計画の「地域医療構想」に基づいて全国400超の公立・公的病院の再編統合計画を進めていると批判。公立・公的病院がコロナ対策の中軸を担っているとして、計画を撤回して公的医療体制の維持・拡充に転換すべきだと力を込めました。
菅首相は「感染症対策で重要な役割を果たしている」と言いつつ、「地域(医療)の事情」や感染症対策を踏まえて「医療提供体制の議論を進める」とまともに答えませんでした。
自粛と一体の補償、大規模支援
罰則規定は断固反対
三つ目は、自粛と一体に十分な補償を行い、コロナから雇用と営業を守る大規模支援策を実行することです。
緊急事態宣言下で、政府の支援は営業時間短縮に応じる飲食店に1日6万円の協力金、取引業者に40万円の支給にとどまります。
志位氏は、事業規模に応じた支援と納入業者、生産者など直接・間接に影響を受ける全ての関連業者を対象にした十分な補償を要求。「感染抑止を実効あるものにするうえでも、十分な補償とセットで行うことが大切だ」と述べました。
さらに、「コロナ収束を前提とした第3次補正予算案は、感染急拡大という新局面に全く対応していない」として、抜本的な組み替えを要求。政府は持続化給付金と家賃支援給付金の支給を1回で打ち切る一方、「Go To」事業には1兆円超の予算を充てているとして、「Go To」を中止し、宿泊・観光産業への直接支援に切り替えるとともに、生活困窮者にまず現金を渡し、給付に切り替える新制度を求めました。
また志位氏は、コロナによる受診控えに追い打ちをかける75歳以上の医療費窓口負担の2割への引き上げの撤回を要求。消費税減税が世界の潮流となっているとして、消費税率5%への減税を提起しました。菅首相は「現役世代の負担上昇を抑えるため」として2割への引き上げを正当化。消費税をめぐっては社会保障の財源に欠かせないとして減税を否定しました。
志位氏は、要請に応じない飲食店や病院へ罰則を科す政府の特措法・感染症法改定の方針について、「断固反対だ」と強調。「感染症対策は国民の納得と合意、十分な補償、社会的連帯によって進められるべきだ」として、日本医学会連合の声明に触れた上で、「罰則で強制することは感染症対策に逆行する」と見直しを迫りました。菅首相は「罰則を設けることも検討していくことが必要」と、あくまで罰則の導入を進める姿勢を示しました。
かつての人権侵害
「かつて結核・ハンセン病では患者・感染者の強制収容が法的になされ、蔓延(まんえん)防止の名目のもと、科学的根拠が乏しいにもかかわらず、著しい人権侵害が行われてきました。上記のように現行の感染症法は、この歴史的反省のうえに成立した経緯があることを深く認識する必要があります」
日本医学会連合の緊急声明(14日、抜粋)
夏の東京五輪は中止を 政府に再検討求める
菅首相が施政方針演説で開催すると強調した今夏の東京五輪・パラリンピック。コロナ危機拡大のもと、世論調査で「中止」「再延期」を求める声は8割超です。志位氏は五輪開催の三つの問題点を指摘し、今夏の開催中止を求めました。
第一はワクチン問題です。志位氏は、一部の国でワクチン接種が始まったものの集団免疫についてはWHO(世界保健機関)の主任科学者が今年中に「達成することはありえない」と述べたことにふれ、「ワクチンを頼りに開催を展望できない」と指摘しました。
第二は、選手が願う「フェアな大会」の問題です。志位氏は、感染状況の違いによる練習などの環境格差、ワクチン接種の格差があり「開催できる条件はない」と述べました。
第三は医療体制。期間中に必要な医療従事者が熱中症対策だけで5千人、PCR検査などコロナ対策を加えればそれをはるかに上回るとし、「多数の医療従事者を五輪に振り向けることは現実的でない」と強調しました。
志位氏は「五輪開催は中止し、日本と世界のあらゆる力をコロナ収束に集中するべきだ」と主張し、ゼロベースからの開催是非の再検討を求めました。
菅首相は「ワクチンを前提としなくても安全安心な大会を開催できるよう準備を進める」などと答弁。ワクチンが間に合わないことを認める答弁に議場はどよめきました。
国民の信頼必要
また、志位氏は「コロナ対策を進めるうえで何よりも大切なのは政治リーダーに対する信頼だ」と強調。「桜を見る会」問題でウソをつき続け、吉川貴盛元農水相らの贈収賄事件や日本学術会議の会員任命拒否の理由について一切説明しない菅首相に「国民の信頼を得られるのか」と迫り、政治の信頼を回復するため、安倍晋三前首相、吉川氏の証人喚問をはじめとした真相究明、違憲・違法の任命拒否の撤回を求めました。
菅首相は「証人喚問は国会が決める」とし、日本学術会議への人事介入も「任命権者として判断を行った」などと開き直って説明を拒み、信頼回復の姿勢を示しませんでした。