2021年1月15日(金)
主張
日本農政の転換
持続可能な農業こそ未来開く
新型コロナ危機は、経済効率を最優先し、命や暮らし、環境を犠牲にしてきた日本社会の脆弱(ぜいじゃく)さを浮き彫りにしています。農と食のあり方も根本から問われています。今年は、農業に未来を開く第一歩の年にしなければなりません。
荒廃させた自民党政治
農業と農山村は大きな危機に直面しています。2020年の農業の中心的な担い手(基幹的農業従事者)は5年前より40万人減少し、136万人となりました。51%は70歳以上です。農業を支えてきた世代の引退が加速し、農山村の過疎が深刻化しています。国土や環境の荒廃が進み、先進諸国で最低の食料自給率38%が一層低下することになりかねません。
農山村の衰退と一体で、大都市の人口集中・過密化はすすみ、食の海外依存も強まりました。そのような社会の危うさをコロナ危機は示しました。コロナ後の社会を展望するとき、農業と農山村の危機打開は待ったなしです。
深刻な事態を招いたのは、米国や財界の言いなりに食料を外国に頼り、次々に農産物を輸入自由化し、国内農業を犠牲にしてきた歴代自民党政権です。大企業の利益第一で農村から土地や労働力を奪ってきた経済政策も農村衰退の大本にあります。
危機を加速させたのが安倍晋三前政権の暴走です。環太平洋連携協定(TPP)などで輸入自由化を強行した上、「企業が一番活躍できる国」を公言し、戦後の家族農業を支えた諸制度をことごとく壊しました。安倍政治の忠実な「継承」を掲げ自己責任を強調し、コロナ禍の米価暴落に何の対策もとらない菅義偉政権では、危機に一段と拍車がかかるのは必至です。
農業と農山村の未来は、無責任な菅政権を退場させ農政の流れを根本から転換してこそ開けます。食料の外国依存をやめ、大規模化や効率一辺倒でなく、大多数の家族経営が成り立つ持続可能な農業や農山村をめざすことです。
それは世界の潮流です。地球温暖化や貧困と飢餓の拡大など人類の存続を脅かす危機を克服するため、国連が定めた持続可能な開発目標(SDGs)の達成が、いま国際社会で焦眉の課題になっています。家族農業・小規模農業の役割が欠かせません。
国連は19年、「家族農業の10年」をスタートさせました。大規模化や工業化、貿易自由化を推進した世界の農政は、先進国でも途上国でも、小規模・家族農家の多数を離農に追いやり、飢餓や貧困を広げ生態系や環境を脅かしました。そのことへの反省から大転換に踏み出したのです。家族農業支援の取り組みは、コロナ後の世界では一層重要な意義を持ちます。
総選挙は変えるチャンス
今年は総選挙が必ず行われます。野党連合政権を打ち立て、農政を転換する絶好のチャンスです。
日本共産党は昨年末、新しい政権のたたき台となる提案を発表しました。その中で「農林水産業を基幹的な生産部門と位置づけ、歯止めない自由化路線を見直し、所得・価格保障によって自給率を50%に」引き上げることや、「地球規模の環境破壊を止め、自然と共生する経済社会をつくる」ため「自然との調和を欠いた農業や畜産から持続可能な食料生産への転換」などを打ち出しました。多くの農業者、市民、野党と力を合わせ実現に力を尽くします。