2021年1月11日(月)
2021年 コロナ禍 日本共産党はいかにたたかうか
NHK党首インタビュー 志位委員長の発言
10日放送のNHK「日曜討論」各党党首インタビューでの日本共産党の志位和夫委員長の発言は次の通りです。聞き手は、伊藤雅之解説委員、中川緑アナウンサーです。
新型コロナの急拡大
無症状者への検査戦略を持たず、GoToで感染を広げた菅政権の責任は重い
伊藤 よろしくお願いします。
志位 おはようございます。
中川 まず、新型コロナ対策について聞きます。感染拡大の現状、そして1都3県を対象にした緊急事態宣言について、どう考えますか。
志位 感染急拡大のもとで、緊急事態宣言の発出はやむを得ないと思います。ただ、こうした事態を招いた菅政権の責任は極めて重い。
検査を増やして感染を抑えるということをやってきませんでした。コロナの場合は、無症状の感染者の方が知らず知らずのうちに感染を広げてしまうという特徴があります。ところが政府は、無症状の方を検査によって把握し、保護する、こういう積極的な検査戦略によって感染拡大を抑止することを一貫してやってこなかった。それどころか、「Go To トラベル」に最後までしがみついて、ウイルスを全国に広げてしまった。
ですから、いまの現状は、菅政権の無為無策と逆行の結果だと、“菅政権による人災”と言わざるを得ないと思います。
医療・暮らしどうする
医療機関への減収補填、事業規模に即して事業が続けられる補償を求める
伊藤 この感染の急拡大で、医療の体制が非常に逼迫(ひっぱく)しています。また、暮らしや雇用にも深刻な影響が出ています。どのような、対策がいま必要だと考えますか。
志位 医療の問題は、いま多くの医療機関が赤字経営に陥っている。ボーナスもきちんと出ない。そういうなかで(看護師等の)離職者が増えてくるという状況があります。私は、(医療機関への)減収補填(ほてん)をしっかりやって、働いている方にしっかり届くような支援をやることが、いま必要だと思います。
それから、補償をしっかりやる必要がある。時短要請の場合は、飲食店に対する補償はもちろんですけれども、納入業者、それから生産者、直接・間接に影響を被る方すべてに対する補償をやる。(営業時間短縮に応じた飲食店への協力金が1日)最大6万円といいますけれど、とても足りません。ヨーロッパでやっているように、事業規模に即して、事業を続けられるだけの補償をしっかりやることを求めていきたいと思います。
罰則導入どう考える
感染対策に逆行――“納得と合意”、“十分な補償”で進めるべき
伊藤 政府は特措法について、感染対策の実効性を高めるために改正が必要だとして(罰則を含めた)検討を進めているわけですけれども、共産党は、この議論にどう臨んでいきますか。
志位 私たちは、罰則を入れるというのは反対です。もともと感染(防止)対策というのは、何よりも“納得と合意”で進めるべきです。それから“十分な補償”で進めるべきです。私は、この二つがあれば、国民のみなさんはみんな協力していただけると思うんです。そこに罰則を入れますと、相互監視ということが起こる。密告ということも起こる。監視社会になり、そして国民が分断されることになりますから、感染対策に逆行すると思います。
それから、罰則の問題でもう一つ言っておきたいのは、入院拒否された方を罰則という議論も出ています。私は、これはとんでもないと思うんですよ。いま東京都だけでも、(新型コロナが陽性で入院先など)行き先が決まらないで、不安のなかにいる方が6700人を超えているんです。そのときに、こんな議論をやるべきではない。いまやるべきは、入院先をしっかり確保する、あるいは療養施設をしっかり確保する、これに全力をあげることだと思います。
「2050年・温室効果ガスゼロ」
世界の流れは、脱炭素、脱原発、再生エネの大規模普及――グリーンリカバリー
伊藤 中長期的な課題について話をうかがいます。菅政権は2050年度の脱炭素化社会の実現を目指すということなんですが、実現のために何が必要か、そして電源構成における原子力発電のあり方、これをどう考えますか。
志位 「(20)50年ゼロ」は当たり前ですが、先ほどの総理の発言を聞いて、私は二つ大きな問題があると思います。
一つは、石炭火力です。いま建設中、計画中の石炭火力は17基です。そうなりますと30年後もCO2(二酸化炭素)を出し続けることになる。これは大きな矛盾で、私は、石炭火力の建設計画は中止する、そして既存のものは計画的に停止、廃止にしていく、この決断がいると(思います)。
それから、もう一つは原発の問題です。(番組で)先ほどの総理の発言を聞いておりましても、原発はあくまで使い続けるというわけでしょう。ところが、原発こそ、大事故を起こしたときには、これは大変な環境破壊をもたらすというのは、われわれは体験しているわけですよ。ですから、原発に頼らない道を進むべきだと(思います)。
いま、世界の多くの国が追求している方向は、コロナからの回復は、脱炭素、脱原発、そして再生可能エネルギーの大規模普及=グリーンリカバリーでやっていこうと、こういう方向ですが、この道を進むべきだと思います。
米中とどう向き合うか
相手がどんな大国でも、道理に立って、言うべきことは言う自主・自立の外交を
中川 外交安全保障について聞きます。アメリカと中国の対立が激しくなっています。それぞれの国とどう向き合うべきだと考えますか。
志位 私は、相手がどういう大国でも、道理に立って、言うべきことをきちんと言う自主自立の外交に切り替えることを強く求めていきたいと思うんです。
アメリカとの関係は、こんなアメリカ言いなりをいつまで続けるのかということが問われています。1月22日に核兵器禁止条約が発効になります。人類史上初めて核兵器が違法化されるわけです。ところがアメリカの顔色をうかがって、日本政府はこれに参加しようとしない、背を向けている。国際社会から大変な失望をもっていま見られているわけですよ。私は、これに署名・批准をして、日本こそ「核兵器のない世界」の先頭に立つべきだと(思います)。
それから、対中国では、いま中国が、東シナ海や南シナ海で力ずくで現状変更するという覇権主義をふるっている。香港やウイグルで人権侵害をやっている。これに対して、これも道理をつくして、正面から「国際法をしっかり守れ」ということを迫っていく、外交的姿勢を確立する必要があると(思います)。
どんな大国に対してもしっかりモノを言う、こういう外交姿勢に変える必要があると思っています。
「陸上イージス」代替、「敵基地攻撃」
日本防衛と無縁、無法な先制攻撃に――“軍事費よりコロナ対策を”
伊藤 政府のミサイル阻止に関する新たな方針の議論をどうお考えになりますか。
志位 これは、いろいろな角度があるんですけれど、一つは、「陸上イージス」が頓挫した。それに代わって、新しいシステム(「イージス・ミサイル搭載艦」)をつくろうというものなんですが、この「陸上イージス」というのは、もともと日本防衛のためじゃなくて、グアムとハワイの米軍基地を守るためのものだったんですね。それに代わる巨額な装備を買い入れようと(している)。5000億円から1兆円かかるといわれています。こういうことをやめるべきだと(思います)。
それから、いま出ております長距離巡航ミサイル等々のいわゆる「敵基地攻撃」のための武器購入。この「敵基地攻撃」というのは、結局、先制攻撃になっていくんです。ですから、憲法にも国際法にも反する道でありまして、そういうもののための武器をどんどん買いそろえることは、やめるべきだと(思います)。
いま必要なのは、軍事費にお金をどんどん注ぐことじゃなくて、コロナの対策に力を入れることだと。“軍事費よりコロナ(対策)”ということを言いたいと思います。
通常国会にどう臨む
「コロナ収束」が前提の第3次補正予算案のやり直し、「社会的検査」を全額国費で
中川 来週18日に召集される通常国会はどう臨みますか。
志位 もちろんコロナの問題が最重要課題ですが、第3次補正予算(案)の根本的なやり直しを求めます。といいますのは、あの補正予算(案)は「コロナの収束」が前提になっているんです。たとえば、中小企業のみなさんにとっての命綱になっている持続化給付金、家賃支援給付金、みんな1月15日で打ち切るものになっている。とんでもないことですよ。ですから、この第3次補正予算(案)でいいのかと(問われています)。
一方で、この予算(案)には「Go To」事業については1兆円以上のお金をつけている。「国土強靱(きょうじん)化」と称して巨大開発のお金をつけている。軍事費の積み増しもあります。
ですから、これは根本からやり直して、持続化給付金、あるいは家賃支援給付金の第2弾をちゃんと出す。それから、仕事を失っておられる生活困窮者のみなさんには、新しい給付金を出すということを私たちは提案しております。本当にコロナから命と暮らしを守る。
そして、とくに検査について一言申しますと、医療機関や高齢者施設に対する一斉・定期的な検査、いわゆる「社会的検査」、これを全額国費でやる、このことも強く求めたいと思います。
伊藤・中川 ありがとうございました。
志位 ありがとうございました。