2021年1月5日(火)
主張
緊急事態宣言検討
コロナ対策の根本姿勢改めよ
新型コロナウイルス感染の急拡大に歯止めがかからない中、菅義偉首相が4日の記者会見で、緊急事態宣言の発令を検討すると表明しました。東京、埼玉、千葉、神奈川の1都3県を対象とし、週内にも宣言する方向です。状況をここまで深刻化させた菅政権の責任が問われます。しかも、菅首相の記者会見では、検査・医療の抜本的拡充策も、営業や雇用への強力な支援策についても踏み込んだ発言はありませんでした。このままでは宣言をしても実効性のある感染抑止策になりません。菅政権は根本姿勢を改めるべきです。
要請と補償は一体で
緊急事態宣言は、昨年3月に改定された新型インフルエンザ特別措置法による措置です。首相は専門家の意見をもとに発令し、対象地域の都道府県知事は、法的根拠に基づく休業要請などができるとしています。昨年4月の感染拡大の際には、7都府県でまず発令され、全都道府県に拡大されたのち5月に段階的に解除されました。
今回検討に入った緊急事態宣言について、菅首相は「限定的、集中的に行う」と述べました。飲食店への営業時間の短縮要請などを中心に行うことが念頭にあるとみられます。しかし、「内容を早急に詰める」というだけで、補償については触れませんでした。これでは飲食店の経営者や労働者に不安を与えることにしかなりません。
今度こそ「要請と一体の補償」という感染対策の鉄則を貫くべきです。昨年の緊急事態宣言では、当時の安倍晋三政権による補償は全く不十分で、多くの飲食店がかつてない苦境に陥りました。経営が立ち行かず事業継続を断念した店も少なくありません。宣言解除後も感染が収束しきらないまま秋から冬の「第3波」に突入し、年末年始の書き入れ時が直撃されています。飲食店で働く労働者も収入の手段が断たれ、住まいまで失う事態が後を絶ちません。
営業を支え、雇用を守る対策と一体となった措置でなければ、国民の暮らしはいよいよ成り立ちません。感染の抑止に実効性を持たせるためにも、菅政権は要請と一体での万全な補償を明確に打ち出すことが必要です。持続化給付金や家賃支援給付金の打ち切り、雇用調整助成金のコロナ特例の縮小は許されません。
ひっ迫する医療体制の中で苦闘する医療機関などへの本格的な支援強化について菅首相が言及しなかったことは大問題です。感染者急増で年末年始も懸命に奮闘している人たちに対し、あまりに冷たい姿勢です。医療機関への減収補填(ほてん)、医療従事者への特別手当の支給を早急に行うべきです。自治体がPCR検査拡充に躊躇(ちゅうちょ)なく取り組めるよう全額国費で検査を行う仕組みをつくることが重要です。
「人災」は許されない
感染拡大に拍車をかけた「Go To トラベル」に固執し続けることは、あまりに重大です。危機的事態を招いたのは、菅政権による「人災」という他ありません。
野党の国会延長要求に逆らって、昨年12月早々に臨時国会を閉じたことは、菅政権に危機感がなかったことの象徴です。
昨年、「勝負の3週間」などといいながら無為無策を重ねた菅政権への国民の不信と批判は高まるばかりです。政治の抜本的な転換が急がれます。