2021年1月4日(月)
日本の核軍縮決議
年々後退、支持失う
核禁条約の署名・批准を
核兵器禁止条約が22日に発効します。こうしたもと、日本政府は核兵器禁止条約に背を向ける一方、核保有国と非保有国の「橋渡し役を果たす」と強調し、国連に核軍縮決議を提案し続けています。しかし、年を追うごとに支持を失い続けています。その最大の理由は、決議の提案内容が年々後退しているからです。日本共産党の井上哲士議員は、参院外交防衛委員会(2020年11月19日)で、この実態を明らかにしました。
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批判が集中した一つが、過去の核不拡散条約(NPT)再検討会議での合意の履行に関する記述の変更です。19年までは、「1995年NPT運用検討・延長会議並びに2000年及び2010年NPT運用検討会議最終文書で合意された措置を履行することの重要性を再確認し」とされていました。ところが、20年の決議では「履行すること」を削除したのです。
2000年のNPT運用検討会議最終文書は、すべての核保有国が「核兵器の完全な廃絶を達成する」「明確な約束」をしました。「約束」の履行を核兵器国に迫ることが国際的に求められている中で「履行すること」を削除したことは重大な後退でした。決議案の記述ごとに賛否を問う分割投票で、この部分の賛成国が昨年から34も減りました。
また、包括的核実験禁止条約(CTBT)への批准を促す表現を弱めた結果、分割投票で賛成が21も減少してしまいます。
「橋渡し」にも逆行
一方、どちらも反対から賛成に転じたのが、「核態勢見直し」(NPR)で核兵器の近代化や小型化を進め、NPT合意に背を向け、CTBTの批准を支持しないとするアメリカでした。核保有国にすり寄る日本の姿勢が露骨に表れた形です。各国は厳しく批判(別項)。井上氏は「核兵器国と非核兵器国の橋渡しといっても逆行している」と指摘しました。
米国の核抑止が日本の安全保障にとって「不可欠だ」として核兵器禁止条約への参加を拒む日本政府の矛盾を突いたのが、日本共産党の穀田恵二議員の衆院外務委員会(11月13日)での質問でした。
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外務省文書を示し
穀田氏は、米国を含む核兵器の存在や保有が「地域における緊張・対立の原因かつ帰結になっている」と明記した外務省文書(2013年)を明らかにしました。核兵器の存在そのものが安全保障上の不安定要因だとの認識を日本政府も持っていることを示したもので、穀田氏は、核兵器の存在と、米国の核抑止力にしがみつくこと自体が「地域の緊張と対立を激化させる原因になっていることではないか」と指摘しました。
穀田氏は、世論調査で核兵器禁止条約への参加支持がドイツで66%、ベルギーで64%、日本でも72%が参加すべきだとしていることにふれ「政府は従来の態度を改めて、速やかに禁止条約を署名し、批准すべきだ」と求めました。
日本の核軍縮決議案に対する各国の指摘
「既存の合意を弱体化させ、かつ無視するものだ」(メキシコ)
「NPT再検討会議での従前の合意に影響を及ぼしかねないものだ」(南アフリカ)
「引き続き核軍縮の諸条約の評価をおとしめるものである」(ニュージーランド)
「特定のいくつかの規定は核兵器国を利するだけであり、問題に関する国際的な規範に反するものだ」(インド)
「NPTの約束を履行することの重要性を引き続き強調することが必要だと考える」(カナダ。ドイツ、オランダ、ベルギー、スイス、チリ、ノルウェーを代表して)