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2021年1月4日(月)

主張

2021年の世界経済

不公正な社会を転換する年に

 新型コロナウイルス感染症の大流行は、世界が抱える矛盾を浮き彫りにしました。打撃は貧困層ほど大きく、超富裕層は危機に乗じて富を増やしています。一方で、大企業の利益を至上のものとする新自由主義が悲惨な社会を生み出したことへの批判が高まりを見せています。2021年、危機を乗り越えてどのような新しい世界を築くかが問われます。

コロナの打撃は貧困層に

 昨年末、国際機関が相次いで、格差の新たな拡大を警告する報告書を発表しました。国際通貨基金(IMF)は、貧困世帯がコロナに感染する比率は富裕世帯の5倍、死亡率は4倍にのぼると推計しました。貧しい人々にはテレワークを選ぶ余地が限られ、貯蓄がないため仕事を減らして感染リスクを抑えることも困難です。

 世界銀行によると、1日1・9ドル(約200円)未満で暮らす極貧人口は20年に8800万~1億1500万人増え、世界人口の9%を超えました。コロナ危機で増えた「新たな貧困層」は南アジアとサハラ以南のアフリカ諸国で最も多く、貧困層は感染とともに感染対策の外出制限によって二重に打撃を受けているといいます。30年までに極貧層を世界人口の3%に減らす長期目標の達成は困難になったとしています。

 超富裕層の資産は途方もなく膨らんでいます。格差について研究している、米国の政策研究所によると、同国のビリオネア(資産10億ドル以上の大富豪)600人超の総資産は20年3月以降、9カ月間で1兆ドル以上増えて4兆ドルを超えました。世界の代表的資産家であるジェフ・ベゾス氏らトップ5人の総資産は1・8倍です。経済危機対策の金融緩和が株価を押し上げたことなどが効きました。

 不公正な社会への批判が政治を変えつつあります。20日に就任する米国のバイデン次期大統領は民主党の選挙公約で大企業・富裕層への課税や公的医療保険の拡充を掲げました。実現に動けば世界に影響を与える可能性があります。

 欧州連合(EU)は年末の首脳会議で、コロナ危機によって打撃を受けた加盟国を支援する復興基金の創設を承認しました。規模は約95兆円です。長年の緊縮政策で傷ついた医療、社会保障の底上げに使われることが期待されます。法人税、資本利得税の増税も英国などで検討されています。

 20カ国・地域(G20)では昨年、巨大IT(情報技術)企業の税逃れや法人税率の引き下げ競争を防ぐ国際的ルールづくりが進められました。今年に持ち越された合意の達成が注目されます。

よりよい再建に向けて

 コロナ後のよりよい社会に向けた模索も始まっています。ローマ教皇は昨年10月、世界のカトリック教会に向けて自らの立場を示した回勅で新自由主義を批判し、人間の尊厳を中心に据えた社会の構築を呼びかけました。米国では資本主義批判とともに「社会主義」に希望を託す声が起きています。

 日本共産党は綱領で、搾取を廃止し利潤第一主義の資本主義を乗り越えて、人間が真に社会の主人公となる社会主義・共産主義に進む展望を明らかにしています。コロナ危機から国民の命と暮らしを守るために奮闘するとともに、希望ある社会をどう築くのか、大いに語りましょう。


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