2020年12月26日(土)
コロナ対応 医療現場は危機的
使命感ではもうもたない
医療・公衆衛生の拡充へ転換を
日本医労連 森田委員長に聞く
新型コロナの第3波が広がるなか医療現場は危機的状況です。差し迫った現状と緊急に取るべき対策について、日本医療労働組合連合会の森田しのぶ委員長に聞きました。(加來恵子)
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医療現場では約1年間、懸命に奮闘しています。しかし、もはや使命感・責任感だけではもたない状況です。
コロナ患者対応の職員は感染対策が必要ですが、防護服は暑く、着脱に時間を要するので水分を控えトイレも我慢するため2時間でもきつく、6時間でヘトヘトです。他の職場からも職員を派遣するので人員不足となり、負担が増しています。
国・自治体のPCR検査が進まず、感染の不安や精神的ストレスも深刻です。誹謗(ひぼう)中傷・差別もなくなりません。職員の多くは、旅行や会食・院外の集まりも制限・自粛が求められています。家族と離れホテル住まいの職員もいて家族の負担も大変です。
病院経営が悪化し、冬の一時金は組合の4割以上が前年比でマイナス回答でした。
しかし、国の支援は極めて不十分な上、あまりに遅すぎます。政府は緊急包括支援交付金の医療分に総額3兆円を設けましたが、医療機関に届いたのは10月末時点で全体の2割程度にとどまります。
1980年代からの「構造改革」で社会保障費が抑制され、病床削減や病院の統廃合、医師・看護師数も抑制され、保健所も大きく削減されてきました。
誤った政策
医療制度の改悪で効率最優先が求められ、100%近い稼働にしないと経営が保てません。新型コロナによる医療崩壊は、こうした医療政策の誤りのなかで起きているのです。
感染症指定病床の94%は公立・公的病院が担っています。患者がなくても病床確保が必要です。しかし、菅政権は経営効率優先で統廃合を進めようとしています。新自由主義的な路線から医療・公衆衛生などを拡充する方向に転換すべきです。
軍事費増大
医療機関に対する減収補てんが急務です。PCR検査を定期的に行い、安心して働く環境をつくるべきです。
医療従事者の増員と「働き方」の改善で医療・介護に全力で向き合える状態を作ることが必要です。16時間にもおよぶ長時間夜勤の解消は、医療の安全・安心を確保する上でも避けて通れません。
公立・公的病院の統廃合計画に同意していた知事や自治体の首長も見直し・凍結を求めています。きっぱり撤回し、不測の事態にも対応できる地域医療体制にすべきです。
5兆円超に膨れ上がった軍事費の予算を削ってコロナ対策にまわすべきです。感染拡大を阻止し、医療を守ることが経済を回すことにもつながります。
労組の力で
労働組合として現場実態を取り上げ、団体交渉やストライキも構えて改善を求めてきました。一時金の削減を撤回させるなどの成果もあげ、「労働組合の力を改めて実感した」との声も聞かれます。
医療機関の減収補てんを求める運動や6次に及ぶ緊急要請など世論を広げてきました。マスクなどの物資・慰労金など、若干改善した部分もあります。声をあげ世論を広げれば政治を動かせると実感しています。
国民のいのちを守るために医療労働者の出番です。世論と共同をさらに広げてたたかう決意です。