2020年12月22日(火)
主張
21年度予算案決定
優先すべき課題は置き去りか
新型コロナウイルスの感染拡大が猛威を振るう中、菅義偉政権としては最初の当初予算となる2021年度政府予算案が閣議決定されました。先週決定された20年度第3次補正予算案と一体で、「15カ月予算」と位置付けています。全体の歳出規模は一般会計で120兆円に上ります。しかし、苦闘する医療現場への支えは全く足らず、国民の暮らしへの本格的支援にも背を向けました。軍事費は過去最大を更新する一方、コロナ対策の土台となる社会保障予算は、高齢化に伴う自然増さえ容赦なく削る冷たさを鮮明にしています。
国民の悲鳴に背を向ける
新型コロナの感染急拡大は、各地で病床が不足し、医療崩壊が現実のものとなっています。雇用や営業への打撃も大きく「このままでは年を越せない」という悲鳴が相次いでいます。
ところが菅政権は、この深刻な事態に真剣に向き合いません。第3次補正予算案と21年度予算案のもとになった菅政権の「追加経済対策」(8日決定)は、「ポストコロナ」に向けた「デジタル化」の推進や「国土強靱(きょうじん)化」の名による公共事業の上積みなどが際立ちました。肝心の検査強化は不十分で、医療機関への減収補てんは含まれていません。暮らし・営業支援はわずかです。まともなコロナ対策をせず、「ポストコロナ」を語るのは本末転倒した「砂上の楼閣」です。
コロナに苦しむ中小企業に業態転換や事業の再編成を迫り、普及が進まないマイナンバーカードの促進を図るなど、“惨事便乗”型の姿勢は重大です。
国民の血税を使う財政は、景気の調整や所得の再分配が本来の機能です。今何より優先すべきは感染防止の対策や国民生活が成り立つ経済対策です。21年度予算案で軍事費に過去最大の5兆3422億円を投入して、長距離巡航ミサイルや戦闘機の開発・取得を進めながら、社会保障費の自然増を1300億円も削減するのは、コロナ禍で医療・介護などの拡充を願う国民の声に反し、財政のあるべき姿からかけ離れたものです。
菅政権の目玉政策である、官民の「デジタル化」や「脱炭素社会」の実現を口実に、税制と財政の両面で企業への支援策を拡充するのも大問題です。政府の独断で使える予備費に5兆円も盛り込んだことは、財政民主主義のあり方からも逸脱しています。
20年度第3次補正予算案と21年度予算案は年明けの通常国会に提出され審議されます。第3次補正予算案が成立してもそれが実際に現場に届くのは3月以降で、当面の対策には間に合いません。20年度の第1次、第2次補正予算に計上された予備費が残っています。これを使って医療支援や経済支援の緊急の対策を実施すべきです。
財政のゆがみをただし
雇用調整助成金のコロナ特例は、時期を区切らず延長すべきです。持続化給付金も再支給が必要です。
小学校の「35人学級」の段階的実施など、国民の世論が政治を動かしたものもあります。税財政のゆがみを正し、本来のあり方を取り戻すために、国民の世論と運動を強めるときです。
国民に冷たい予算案の抜本的な組み替えを菅政権に迫るとともに、政権交代を実現するたたかいが重要です。