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2020年12月19日(土)

主張

陸上イージス代替

米国言いなりの矛盾があらわ

 政府は、6月に導入を断念した陸上配備型迎撃ミサイルシステム「イージス・アショア」の代替策として、「イージス・システム搭載艦」2隻を新造することを閣議決定しました。アショア配備によって「24時間365日」の対応が可能となり、海上自衛隊の負担も軽減できると地上配備の優位性を指摘していたのに、まともな説明もなく洋上配備への転換となりました。導入費用もアショアより大きく膨れ上がります。防衛政策上の必要からではなく、米国言いなりに導入を決めた対米追従政治の矛盾と危険があらわです。

導入ありきで口実後付け

 アショア導入は2017年、米国製兵器の大量購入を迫るトランプ米大統領と安倍晋三首相(当時)の首脳会談をへて閣議決定されました。当初から官邸主導の「首相案件」と指摘されていました。

 それまでの日本の「ミサイル防衛」は、▽洋上のイージス艦から発射する迎撃ミサイルSM3で敵の弾道ミサイルを大気圏外で迎撃▽撃ち漏らした場合、移動可能な地上配備型迎撃ミサイルPAC3で破壊―という構想でした。

 アショアは、地上の固定基地からSM3を発射するシステムです。防衛省は同システム導入の必要性について「イージス艦は、整備や補給のために港に戻る必要があり、24時間365日対応することが困難」と指摘していました。

 ところが、今回は、イージス・システム搭載艦であれば「情勢の変化に応じ、運用上最適な海域へ柔軟に展開することが可能」と、一転、洋上配備の有用性を強調しています。それならなぜ洋上配備を一度否定したのか、説明が付きません。アショア計画は配備候補地の秋田、山口両県で早くから住民らが反対の声を上げていました。整合性のない政府の説明は、導入ありきの決定でその口実は後付けだったことを示しています。

 防衛省の試算で、イージス・システム搭載艦の建造費が2隻で4800億~5000億円以上となっているのも重大です。アショア2基の導入費用よりも800億円以上も高額です。費用の膨張は、アショア導入のためすでに契約済みの地上レーダー(SPY7)を搭載できるよう船体の大型化が想定されているからです。

 閣議決定は、安倍前政権から菅義偉政権に引き継がれた敵基地攻撃能力保有に関する検討については結論を先送りしました。一方で、敵基地攻撃に転用できる新型の長距離巡航ミサイルの開発を決めました。国産開発中のミサイル「12式地対艦誘導弾(SSM)」を長射程化し、航空機や艦船からも発射可能にします。

敵基地攻撃への転換想定

 政府は、F35Aステルス戦闘機に搭載する対地・対艦ミサイルJSM(射程500キロ)など長距離巡航ミサイルの取得や、相手から迎撃されないよう高高度を超音速で飛ぶ高速滑空弾、音速の5倍以上で飛行する極超音速誘導弾などの研究開発も始めています。将来、敵基地攻撃能力の保有へと政策転換することを想定し、必要な兵器をそろえておく狙いがあるのは明白です。

 日本の軍事費をさらに拡大し、東アジアの軍拡競争をいっそう激しくするアショア代替策や敵基地攻撃能力保有に向けた動きは今すぐやめるべきです。


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