2020年12月10日(木)
主張
政府追加経済対策
国民の願いと逆さまの中身だ
菅義偉内閣が新型コロナウイルス感染の急拡大を受けて追加経済対策を決定しました。医療提供体制が各地で危機的状態に陥っている中、医療機関の減収を補てんする措置はなく、PCR検査拡充に必要な全額国庫負担の枠組みもありません。中小業者が「このままでは年を越せない」と声を上げているにもかかわらず、持続化給付金、家賃支援給付金は打ち切りです。その一方で感染防止を妨げる「Go To トラベル」は来年6月まで延長します。やることが逆さまです。
感染拡大対策の拡充なし
事業規模は73・6兆円です。財政支出40兆円のうち感染防止策は5・9兆円と2割に満たない金額です。現に起きている感染第3波に対応した政策の拡充がまったくありません。医療機関が求めているのは、受診控えや手術、検査の延期による著しい収入減少への補てんを含めた支援です。追加対策はこの要求に背を向けています。
地方自治体がPCR検査を大規模に広げようとしても国が費用の半分しか負担しないことが障害になっています。しかし全額国庫負担の仕組みは設けませんでした。感染対策のはなはだしい軽視です。感染を抑え込まないことには経済成長もありません。
財政支出のうち「ポストコロナに向けた経済構造の転換・好循環の実現」が18・4兆円と半分近くを占めます。「コロナ後」ではなく、営業継続の瀬戸際にある中小企業や個人事業主を支援すべきです。中小企業対策は新事業の展開や業態転換への補助金創設をはじめ「生産性の向上」「事業再構築」が中心です。持続化給付金の再支給を拒み、倒産、休廃業を防ぐ支援策は皆無です。「淘汰(とうた)を目的とするものではない」とわざわざ言い訳するところに狙いが感じられます。
休業手当の一部を助成する雇用調整助成金の特例措置は来年3月以降、段階的に縮減します。雇用情勢は今後も悪化が懸念されています。休業している人たちを失業者にして放り出すことになりかねません。
「ポストコロナ」の冒頭に置いたのが「デジタル改革」です。次世代通信規格「5G」以後の技術開発促進をはじめ大企業への支援策がずらりと並んでいます。マイナンバーカードの普及も「一気呵成(かせい)に進める」としています。マイナンバーカードと健康保険証の一体化も明記しました。個人情報保護の点でリスクが指摘され、医療機関の負担になることが懸念されています。コロナ対策とおよそ無関係な政策です。今、急いで盛り込むものではありません。
危機に乗じ財界要求推進
住民の個人情報を集積、管理する「スーパーシティ構想」や不要不急の大型公共事業も推進します。財界の要求で進めてきた政策をコロナ危機に乗じて実現させようとするのはやめるべきです。
追加対策は10兆円の予備費を上積みします。第2次補正予算の予備費が7兆円も残っているのに政府は使い道を示しません。この上、巨額の予備費を膨らませることは財政民主主義に反しています。
国費30・6兆円は2020年度第3次補正予算案、21年度予算案に計上されます。医療と検査の抜本的拡充、暮らしと営業への根本的転換が必要です。