2020年12月9日(水)
吉川元農水相の「政治とカネ」
背景に養鶏業利益か
吉川貴盛元農水相が広島県福山市の鶏卵生産会社「アキタフーズ」の元代表から、2018~19年の大臣在職中に現金を受け取った贈収賄疑惑が浮上し、「政治とカネ」をめぐる重大な問題となっています。その背景には元代表が養鶏業界の負担を減らすための措置を吉川氏に図ってもらう意図があったとみられています。
元代表は業界団体「日本養鶏協会」で副会長や特別顧問を長年務め、業界の要望を政治家に伝えてきました。
国際獣疫事務局(OIE)が、快適な状況で家畜飼育をめざす「アニマルウェルフェア」に基づく国際基準を日本に求めてきたのに対し、養鶏業界は、基準は「巣箱」「止まり木」の設置の義務化など、設備投資に多大な資金負担がかかるとして強く反発。元会長はその意向を政府に伝えていました。政府はOIEに反対意見を提出し、結果として止まり木と巣箱の義務化は見送られました。
また、鶏卵の取引価格が下落時の基準価格との差額を補てんする事業の拡充も、吉川氏が農水相在任中に実現の方針が決められました。政策が裏金でゆがめられていた可能性があります。
吉川氏は自民党北海道連会長で、二階俊博幹事長の派閥・志帥会の事務総長、9月の自民党総裁選では菅義偉首相の選対事務局長を務めるなど、政権中枢に近い党の重鎮です。
この間、吉川氏は党の役職を辞任したものの疑惑についての説明は一切なく、自民党も容認する状態です。7日に国会で開かれた野党合同ヒアリングで野党議員は農水省に説明を求めましたが、捜査中を理由に「答えは控える」などと繰り返すばかりです。
さらに8日には西川公也内閣官房参与・元農水相が、元代表が所有するクルーズ船で接待を受けた疑惑で参与を辞任する意向を明らかにし、鶏卵業者による政治買収の疑惑はさらに広がっています。国会での徹底した疑惑解明が求められます。