2020年11月16日(月)
首相ブレーンが持論展開
中小企業の再編促す
秋のレビュー
政府は15日、特定の国の事業について外部有識者が各省と公開の場で議論する「秋のレビュー」の4日間の日程を終えました。最終日の同日には中小企業支援策などの検証に、菅義偉首相のブレーンの一人、デービッド・アトキンソン氏が評価者として出席しました。
同氏は、米金融大手ゴールドマン・サックス出身の企業経営者。中小企業の合併・統合、淘汰(とうた)を主張していることで知られています。菅政権が新設した「成長戦略会議」のメンバーにも起用され、発信力を強めてきました。
会合では、行革推進本部事務局が、これまでの中小企業支援策がどの程度「生産性」の向上に寄与したのかなど効果の検証が必要だと提起。アトキンソン氏は「生産性を上げていくためには規模の拡大が必要だ」として中小企業の規模拡大を促す上で、従来の施策の実効性を問題視しました。
経済産業省の担当者は「小売業では必ずしも小さな店舗が悪いとは思っていない」「規模が上がれば生産性が上がるのは明らかだが、規模が上がらなくても生産性が上がる可能性も捨てたくない」などと答えました。
同日提出された政府の資料によると、日本の中小企業は、全事業者数の99・7%、全従業者数の68・8%を占めています。
アトキンソン氏が主張する中小企業再編論については、安倍内閣で内閣官房参与を務めた本田悦朗前駐スイス大使も先月、自民党若手議員の会合で「極めて危険だ」と発言。「失業者がいっぱい出て日本経済は破壊される。必ずや失敗する」と批判しています。
一方、アトキンソン氏とともに成長戦略会議のメンバーを務める竹中平蔵・パソナ会長は、コロナ禍での中小企業支援策で大事なのは「もともと経営が危なかった企業は救済しないということ」だと主張。「淘汰されるべき企業を残しておくと、将来的に日本経済の弱体化につながります」(『文芸春秋』11月号)などと述べています。
「秋のレビュー」では、日本原子力研究開発機構の事業や航空自衛隊F2戦闘機の後継機調達、教育オンライン化なども取り上げられました。