2020年11月15日(日)
主張
日本の「軍縮」決議
世界から信頼を失うばかりだ
核兵器禁止条約の来年1月発効が確定する中、国連総会第1委員会で、核軍縮に関する諸決議の採択が行われました。そこでは日本政府が提出した決議案に批判が集中する事態となりました。
破綻した「橋渡し」論
菅義偉政権の決議案「核兵器のない世界に向けた共同行動の指針と未来志向の対話」は3日、賛成139カ国(反対5、棄権33)で採択されました。しかし、賛成国は昨年より9減りました。一昨年と比べると21もの減少です。共同提案国は、2016年は109カ国だったのに、今回は26カ国へと激減しました。
日本政府は、禁止条約で対立する核保有国と非核国の「橋渡し」をすると主張し、それを国連の決議案の重要な柱としてきました。ところが、ふたを開けてみると、国際社会の支持を一層失う結果となりました。決議案があまりに核保有国寄りだったからです。
決議案は、核兵器廃絶を「究極」の課題と、永遠のかなたに先送りしています。これは核兵器に固執する姿勢に他ならず、核廃絶を促進する立場とは相いれません。両者を取り持つかのような「橋渡し」論は、そもそも成り立ちません。
決議案は核保有国に配慮して、核兵器禁止条約に一切触れていません。完全無視の日本の態度は、禁止条約を推進してきた国々への重大な挑戦です。日本の決議案に棄権したニュージーランドは、「核兵器禁止条約の位置づけを低めている」と強く批判しました。
また、核不拡散条約(NPT)第6条の核軍縮交渉義務や、「核兵器廃絶の明確な約束」(2000年)など、核保有国を拘束するNPT再検討会議の合意について、昨年の決議案にあった「合意の履行」という記載を削除しました。合意を反故(ほご)にしたい核保有国の意に沿ったものです。これには「(合意を)再解釈し、弱め、無視している」(メキシコ)「これまでの合意や表現と一致しない。真の『橋渡し』を希望する」(オーストリア)など厳しい言葉が相次ぎました。昨年賛成したカナダなど6カ国は、共同で棄権を表明しました。核兵器の非人道性への「深い憂慮」を「認識する」へと大きく後退させたことも問題視されました。
一方、核保有国側もロシアと中国は反対し、昨年賛成のフランスは包括的核実験禁止条約発効の位置づけが弱められたことなどを理由に棄権しました。「橋渡し」論の破綻は明白です。
このままでは日本政府は、国際社会の信頼をますます失います。唯一の戦争被爆国にふさわしいイニシアチブを発揮してこそ、核大国の姿勢を動かし、核兵器廃絶へ前進できます。
野党連合政権で転換を
日本の運動には重要な国際的責務があります。世論調査では7割が禁止条約への参加を支持し、署名・批准を求める意見書も約500の地方議会で可決しています。「日本政府に核兵器禁止条約の署名・批准を求める署名」が10月29日、被爆者をはじめ、広範な人々の賛同で呼びかけられました。国民的運動の発展が期待されます。
来たる総選挙で菅政権を倒し、野党連合政権を実現しましょう。禁止条約の批准を実行する政権をめざして、市民と野党の共闘を力強く発展させる時です。