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2020年11月10日(火)

主張

首相の事前調整論

苦し紛れの卑劣なウソ許せぬ

 日本学術会議の推薦会員6人の任命拒否について、菅義偉首相が会員の推薦名簿が提出される前に「調整」がなかったからだと言い出し、大問題になっています。任命を拒んだ根拠が野党の国会での追及でことごとく破綻する中、苦し紛れに持ち出した新たな「正当化」論です。しかし、学術会議元会長は、名簿変更を意味するような「調整」はなかったと否定しており、首相の主張は成り立ちません。事実をねじまげて学術会議に問題があるかのように描き、責任逃れを図ろうという姿勢は卑劣です。首相のウソを許さず、任命拒否を撤回させることが重要です。

露骨な「政治介入宣言」

 首相の発言は5日の参院予算委員会の自民党議員への答弁です。以前は学術会議が正式の推薦名簿を提出する前、政府と「一定の調整」が行われたとし、「今回は、そうした推薦前の調整が働かず、結果として学術会議から推薦された者の中に任命に至らなかった者が生じた」と突然言い出しました。「以前」とは安倍晋三政権下の会員改選時の2017年の1回だったと6日に明らかにしました。

 しかし、当時会長だった大西隆・東京大学名誉教授は「首相の言う『調整』が『推薦名簿の変更』を意味するのであれば、調整したという事実はありません」(8日付本紙インタビュー)ときっぱり反論しています。事実を偽り、学術会議に責任を押し付けようという首相の姿勢は到底許されません。

 だいたい事前調整が働かなかったから任命に至らなかったという首相の発言そのものが重大です。日本学術会議法は、会員の選考・推薦は学術会議の権限と定めています。「任命」以前の「選考・推薦」の段階で政府が介入することは、明白な違法行為です。6日の参院予算委で日本共産党の小池晃書記局長が徹底追及したように、「学術会議の独立を脅かす政治介入」を公然と宣言したことに他なりません。追い詰められた菅首相が新たに持ち出した「すり替え」は、とても通用しません。

 「総合的・俯瞰(ふかん)的」「多様性が大事だ」など首相の持ち出す任命拒否の理由は、私立大学の研究者や女性研究者を排除した事実と矛盾するなど、完全に破綻しています。「必ず推薦通りに任命しなければならないわけではない」との政府見解が「一貫した考え」との主張も、18年に内閣法制局とすり合わせた文書以外に根拠を示せず、「一貫」どころか2年前に国民に隠れて法解釈を改ざんしたのは明白です。杉田和博官房副長官が人選に介入した疑いも深まるなど、同氏の国会招致と徹底解明を求める声は高まっています。

見るに堪えない悪あがき

 菅首相にとって初の一問一答形式となった衆参予算委の4日間の質疑で際立ったのは、首相の見るに堪えない答弁姿勢です。聞かれたことに正面から答えずに、はぐらかしと開き直りに終始し、準備したペーパーを棒読みするだけでした。答弁に窮して官僚から手書きのメモが何度も差し出され読み上げる光景も繰り返され、「答弁はまず自分で」「自助で」という批判を浴びています。論戦で窮地に立った菅首相が持ち出した「事前調整」論は、まさに悪あがきです。学術会議に責任を転嫁して逃げ切ろうという卑劣な態度が浮き彫りになるばかりです。


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