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2020年10月18日(日)

住民票旧姓記載0.1%

既婚改姓者 “女性活躍”昨年導入

 結婚前の姓(氏)を住民票に記載する人(旧姓記載者)について、この仕組みが始まった昨年11月から今年9月末までの状況を総務省に聞いたところ、全国で3万4488人にとどまっていることが分かりました。既婚改姓者3890万人(既婚者の半数。国勢調査)の約0・1%に当たります。

 本紙は政令20市に(1)旧姓記載者数(2)市独自の旧姓使用拡大措置の2点を電話で聞きました。旧姓記載者は20市の合計で7666人。全国と同様に既婚改姓者約800万人の0・1%程度でした。ちなみに内閣府の調査によると、既婚改姓者のうち、旧姓を使用をしている人は10%。これを考慮すると、住民票の旧姓記載者は旧姓使用者の中の1%程度となります。

 市独自の旧姓使用拡大措置について、すべての市が「把握していない」または「ない」と答えました。

 安倍前政権は、女性活躍の柱の一つとして、昨年11月実施の住民票・旧姓記載措置に194億円の予算を投入してきました。

法的裏付けない通称使用

高裁判決 複数の氏は不利益

写真

(写真)野口敏彦弁護士

 旧姓使用・通称使用をめぐっては、2018年からの選択的夫婦別姓制度を求める訴訟でも争われています。

 別姓の選択肢がない民法・戸籍法の違憲性を争う訴訟(3カ所)の一審判決(昨年10~11月)は、結婚改姓による不利益が通称使用で「緩和される」と評価したり、「不利益が拡大されているとはいえない」と判断。被告・国側の主張に沿う主張をしてきました。

 しかし、控訴審判決の最初となった今年9月16日の広島高裁判決は、通称使用について被告・国側に厳しい見方を示しました。「婚姻前の氏(姓)を通称使用できる場面は限られるし、また、仮にこれが今後広まったとしても、複数の氏を使用するために混乱を生じたり不利益を受けたりする場面があることは否定できない」と認定。「法的裏付けのない通称使用には限界がある」と判断しました。判決が通称使用の限界を「場面が限られる」という量的限界と「複数の氏を使用するための混乱と不利益」という質的限界の両面から指摘しているのは重要です。

 選択的夫婦別姓を求める訴訟の原告弁護団の野口敏彦事務局長(弁護士)は、「昨年11月の住民票等への旧姓併記制度の開始以降、弁護団は手分けをして制度の運用状況、たとえば、旧姓での銀行口座が開設できるか、不動産登記ができるか、クレジットカードが作れるかなどについて調査し、報告書を裁判所に提出しました。それが採用され、判決は『法的裏付けのない通称使用には限界があると言わざるを得ない』と明言した」と評価します。

 通称使用の限界を認めた判決の意義について、野口弁護士は、夫婦同姓を定めた現行規定を合憲と判断した2015年12月の最高裁判決との関連を指摘します。「最高裁判決が最終的に夫婦同氏(姓)制を合憲としたよりどころが、この通称使用による不利益の緩和という点でした。そこに限界があると認定されたことは、私たちの訴訟の最高裁判断に少なからず影響があるのではないかと考えています」

 原告が目指すのは、夫婦別姓を選択できない現行制度の違憲性を認めさせることです。控訴審判決は、広島高裁に続き、東京高裁で20日(原審・東京地裁本庁)と23日(原審・東京地裁立川支部)に出される予定です。

広島高裁判決が認定した旧姓使用・通称使用の実態(判決文から)

●婚姻前の氏を用いて銀行口座を開設したり、クレジットカードを作成したりすることができるか否かは、金融機関・カード会社により対応が異なる

●不動産登記簿が婚姻前の氏を併記する対応をしていないため、住宅ローンに関する金融機関との金銭消費貸借契約や抵当権設定契約を婚姻前の氏を用いて締結できない

●所得税、地方税及び固定資産税の納税通知書及び領収書はいずれも戸籍名のみで表記され、特に所得税については納税名義にも還付名義にも婚姻前の氏は使用できない

●国外では夫婦別氏を選択できるため、国外に渡航・居住した際には、婚姻前の氏の通称使用の必要性が理解されず、別人に成りすましていることが疑われるなどの問題が生じる

●弁護士が成年後見人、保佐人、補助人又は後見監督人としての業務を行う場合、成年後見等に関する登記事項証明書に記載されるのは戸籍上の氏名のみである


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