2020年10月13日(火)
JCJ大賞 「桜」疑惑 追及続ける
山本日曜版編集長 受賞スピーチ(要旨)
10日に行われた第63回日本ジャーナリスト会議(JCJ)賞の贈賞式で、JCJ大賞を受賞した、「しんぶん赤旗」日曜版の山本豊彦編集長のスピーチ(要旨)は以下の通りです。
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「赤旗」日曜版編集部による「桜を見る会」私物化疑惑のスクープと一連の報道をJCJ大賞に選んでいただき、ありがとうございます。
「赤旗」は最近では、2014年に日曜版編集部が、18年には政治部・外信部がJCJ賞を受賞しています。大賞は今回が初めてです。
日曜版報道の核心は、桜を見る会の問題を安倍晋三前首相による国政「私物化」の重大疑惑として告発した点にあります。
これまで政治家をめぐる疑惑の大半は、密室の中でおこなわれていました。しかし桜を見る会は、首相主催の公的行事として新宿御苑で開かれ、多くの大手メディアが取材しています。
●赤旗の視点
「ご飯論法」で有名な法政大学の上西充子教授はJCJ大賞の受賞が決まった際、こう評価しました。「大手メディアの記者たちにとって、安倍首相による『私物化』は当たり前のことだったのかもしれません。『赤旗』日曜版が違ったのは、この問題を安倍政権による『私物化』の問題だととらえ、報じるべきだと考えたことです。漫然と取材をしているだけでは、こうした問題意識を持つことはできません。『私物化は安倍政権の本質』と見極めたその着眼点が、JCJ大賞として評価されたのだと思います」(日曜版20年9月13日号)
私たちが最も大切にしているものは、ものごとをどのように見るかの「視点」です。私たちはこれからも、記者ひとりひとりがこうした「視点」を持ち、取材をしたいと思っています。
今回の取材で私たちが重要だったと思っているのは、公開情報の活用、なかでもインターネット上での公開情報の活用です。
安倍さんの地元・山口からの多くの参加者は、桜を見る会を安倍後援会の年中行事だと思っていました。そのためインターネット上のブログや、フェイスブックなどに少なくない参加者が書き込みをしていました。
参加者が書いたブログやフェイスブックなどを分析する中で、桜を見る会の招待状の受付票の「区分番号」「60」が安倍前首相の招待枠であることなどさまざまなことがわかりました。
●権力の監視
問題は、安倍事務所がどう関与していたのかの裏付けです。取材対象となる後援会関係者の多くは自民党支持者です。その時、大きな力となったのが、各地に広がる日本共産党のネットワークです。
日本共産党の地方議員や支部のみなさんは、地域に根を張り、さまざまな活動を通じて保守の方々とも一定の信頼関係を築いています。その紹介があったから、安倍後援会の関係者も「真実を明らかにするため」と政治的立場を超え、私たちの取材に応じてくれました。
桜を見る会疑惑はすぐに国政の大問題に浮上したわけではありません。日曜版がスクープしても当初、大手メディアは、一切後追い報道をしませんでした。桜を見る会疑惑を国政の大問題に押し上げたのは、市民の世論であり、国会で野党が共闘して追及したからです。
『世界』(20年1月号)の「メディア批評」は「赤旗にあって大手メディアにないものは『追及する意思』ではないか」と書いています。
「赤旗」が創刊されたのは1928年2月1日です。私たちの先輩たちは、最大の権力犯罪である侵略戦争に命懸けで反対しました。その歴史を持つ私たちは、「権力監視」の意志はどこにも負けません。
菅政権による日本学術会議への人事介入が大問題になっています。これは「赤旗」日刊紙のスクープです。安倍政権を上回る強権政治のあらわれとみた「視点」があったからこそスクープできました。
桜を見る会の私物化疑惑は、国政がゆがめられた大問題です。菅政権が、来年以降の桜を見る会の開催を中止するからといって、真相究明をやめるわけにはいきません。私たちはこれからも、疑惑の追及を続けていきます。