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2020年10月3日(土)

新型コロナ危機から、命とくらしを守り、経済を立て直すための緊急申し入れ

2020年10月2日 日本共産党

 日本共産党の志位和夫委員長が2日、西村康稔経済再生担当相に手渡した菅義偉首相あての「新型コロナ危機から、命とくらしを守り、経済を立て直すための緊急申し入れ」の全文は次の通りです。


 新型コロナウイルス感染症は、東京をはじめ各地で市中感染が続き、収束にはほどとおい状況です。医療機関や介護施設、学校などでの集団感染も相次いでいます。検査と医療体制の抜本的な拡充などによる感染抑止は、国民の命と健康を守る政治の最優先課題となっています。

 一方、新型コロナ感染症によるくらしと経済への打撃は、日を追うごとに深刻さを増しています。4~6月期のGDPは年率28・1%減という戦後最悪の落ち込みになり、その後も、7月の家計消費が前年同月比7・6%減という大幅な減少となるなど、失われた需要と消費は戻っていません。「アベノミクス」のもとで労働者の実質賃金は低下を続け、2度の消費税増税はくらしと経済に重大なダメージをあたえました。そこに新型コロナ危機が襲ったことで、家計、雇用、中小企業は、深刻な危機に直面しています。

 新型コロナ危機から、命とくらしを守り、経済を立て直すために、政府として以下の対策を緊急に講じることを求めます。

1、コロナ感染拡大防止の最重要課題として、検査と医療を抜本拡充すること

 政府は、感染拡大を防止することと、社会・経済活動を再開することを両立させると強調しています。

 この両者を両立させる最大のカギとなるのは、検査と医療を抜本的に拡充することです。PCR等検査の抜本的な拡充抜きには、感染の再燃は避けられず、感染の不安があれば国民はさまざまな活動に安心して取り組めません。いざというときに医療を受けられることへの不安があれば、社会・経済活動はなりたちません。

 ところが、PCR検査は、人口比で日本は世界153位と異常な立ち遅れを抜け出していません。政府の言う1日7万件の検査能力に対しても、最大でも3万件程度という低い水準で推移し、直近の検査数は減少傾向にあります。医療体制は、コロナ禍で医療機関の経営危機が広がるなど深刻な危機のもとにあります。これを放置したままでは、経済・社会活動を安心してすすめていくことはできません。

(1)感染拡大防止のための戦略的な大規模検査をすすめること

 新型コロナの特徴は、無症状の感染者をつうじて感染が広がっていくことにあります。国立感染症研究所は、「一旦収束の兆しを見せた」感染が7月に再拡大した経緯について、“経済活動再開を機に軽症・無症候の患者がつないだ感染リンクが一気に顕在化した”と分析しています。

 発熱などの症状が出ている人と濃厚接触者を主な検査対象にするという従来のやり方では、無症状者を見逃し、沈静化と再燃の波が繰り返されることは避けられません。感染拡大を抑止し、コントロールするためには、無症状の感染者を把握・保護することも含めた積極的検査を行うという戦略的転換が必要です。

 ――感染震源地(エピセンター)、感染急増地(ホットスポット)となるリスクのあるところに、網羅的な検査を行うこと。

 クラスター(感染者集団)の経路を追いかける「点と線の検査」だけでなく、感染が急増するリスクのある地域や業種に「面の検査」を行い、無症状の感染者を発見・保護することが必要です。感染拡大防止のための積極的な検査を行うべきです。

 ――医療機関、介護・福祉施設、保育園、幼稚園、学校、学童クラブなど、クラスターが発生すると多大な影響が出る施設等への「社会的検査」を行うこと。

 病院での院内感染、介護・障害福祉施設での集団感染が各地で続いています。小中高校、学生寮、保育園、幼稚園、学習塾など教育関連施設でのクラスターも頻発しました。これらの集団感染によるリスクが高い施設の職員・関係者を定期的に検査し、感染拡大を防ぐことが必要です。

 ――PCR等検査の自治体負担をなくす、国の全面的な財政措置を行うこと。

 多くの自治体が、濃厚接触者に限らない無症状者への積極的検査や、医療機関や介護施設への社会的検査に乗り出していますが、これらを行政検査として行う場合、費用の半分が自治体負担となることが、検査推進の足かせとなっています。全国知事会も要求する“全額国庫負担による検査”の仕組みをつくることを求めます。

 ――秋から冬にかけての新型コロナとインフルエンザの同時流行に備え、万全の体制をとること。

 政府は、地元のかかりつけ医・診療所が検査を行う体制をつくるとしています。しかし、現場からは、「院内感染を完全に防ぐのが難しい」「万一、院内感染を起こすと、経営がなりたたなくなる」などの声が聞こえてきます。検査を行う診療所を確保するために、駐車場でのテント設置など院内感染を防止するための取り組みへの十分な助成を行うとともに、診療所の経営への徹底的な財政的支援を求めます。

(2)「コロナによる減収補てんはしない」という姿勢をあらため、政治の責任で医療危機を打開する

 医療体制の強化が必要な時に、病院の“コロナ経営危機”と医療従事者の“コロナ賃下げ”を引き起こした政治の責任は重大です。このままでは、感染拡大による「医療崩壊」の前に、国の制度と政策の不備による「医療崩壊」が起こりかねません。

 政府は、10兆円の予備費のうち1・2兆円を「医療提供体制の確保」に充てるとしていますが、これは「今後発生するコロナ患者」を治療する医療機関に、診療報酬や病床確保料の上乗せを行うもので、すでに経営危機に陥っている医療機関への支援とはなりません。

 日本病院会など3団体の経営実態調査によれば、全国の病院は4~6月期に平均10%を超える赤字となり、4分の1を超える病院で夏の賞与が減るなど、医療従事者への賃下げが続いています。こんな異常事態をなくす財政措置が必要です。

 ――「減収補てんはしない」というかたくなな姿勢を改め、医療機関への減収を補てんする支援を行うこと。コロナ患者を受け入れてきた病院はもちろん、受診抑制などで医業収入が減少したすべての病院・診療所に補てんを行うとともに、感染防護具や医療用器材を国の責任で現場に届けること。

 ――地域医療構想による公立・公的病院の統廃合・病床削減を中止すること。

 ――介護・福祉施設についても、利用抑制による減収の補てんを行い、感染防護具を国の責任で確保すること。

(3)保健所の体制を抜本的に強化する

 無症状や軽症の感染者を着実に発見・保護していくには、感染追跡を専門に行うトレーサーが不可欠です。東京都内の保健師の配置数は、人口10万人当たり最低30人のトレーサー配置を義務付けている米ニューヨーク州の4分の1の水準にすぎません。

 保健所の現場は、この間のコロナとのたたかいで疲弊し、母子保健、自殺予防、難病・精神障害対策など、感染症対策以外の業務に手が回らない事態も起こっています。

 ――退職者の活用や臨時の配置を含め、保健所の緊急の体制強化を行うとともに、抜本的な対策として、保健所の増設や恒常的な定員増に踏みだすこと。

(4)医療・介護・障害福祉・保育――ケア労働を担う働き手の処遇を改善する

 医療、介護、障害福祉、保育など、人間の命を守るケアに関わる労働が、あまりに粗末に扱われてきました。目前のコロナ危機を打開するためにも、コロナ後によりよい未来を切り開くためにも、ケア労働を担う働き手の処遇を改善する改革が必要です。

 ケア労働を担う人たちの処遇は、政府が決める診療報酬・介護報酬などの“公定価格“で決まっています。政府がやる気になれば、すぐにも待遇改善は可能です。

 ――削減・抑制されてきた診療報酬の増額、地域医療を支える医療機関への公的支援、医師・看護師の養成数の抜本的増員などにより、医療従事者の過酷な長時間労働を是正すること。

 ――「全産業平均より月10万円安い」とされる、介護・障害福祉・保育等で働く労働者の賃上げ・処遇改善を行うこと。その際、国費による賃金への直接補助とともに、介護報酬、障害福祉の報酬、保育単価などを抜本的に引き上げ、それらを利用者の負担増に跳ね返らせないための財政措置を講じること。

(5)“コロナ差別”をなくす政治のイニシアチブを

 感染への不安から、感染者や医療従事者、その家族などに心ない中傷を投げつける風潮が起きています。こうした中傷は人権侵害であるとともに、感染の疑いのある人が名乗り出ることをためらわせるなど、感染防止を妨害します。差別と分断の拡大を食い止めるために、政治がイニシアチブを発揮することが求められます。

 ――政府として、差別・バッシングを許さないメッセージを強力に発信すること。

2、雇用と事業を維持し、経済を持続可能にする政策を――コロナ危機を倒産と失業の悪循環に陥る恐慌にしてはならない

 「密を避ける」などの「新しい生活様式」は、売り上げの減少、需要と消費の減退を長引かせざるを得ません。「先行き」の見えない不安が広がり、年末にかけて「倒産・廃業が急増する」恐れがあります。中小企業の廃業・倒産と、リストラ・解雇、雇い止めなどの雇用危機が進行すれば、大不況の悪循環に陥ります。コロナ危機から経済恐慌に深化させてしまうのかどうかの瀬戸際に立っています。雇用と事業を維持し、持続できるように最大限支援することが、いま求められる最重点の経済政策です。

(1)雇用と事業を持続させるために決めた支援を、すみやかに現場に届け切ること

 第2次補正予算の成立から4カ月が過ぎても、決められた支援が現場に届いていません。労働者への休業支援金の給付決定は20万件(9月末)で、予算額5400億円の3%にすぎません。家賃支援給付金の給付も、申請数の3割にも満たない17・7万件(9月27日現在)で、持続化給付金が支給された340万件の5%にすぎません。対象要件が狭いうえに、「申請書類が複雑でわからない」「何度も書類を出しても返される」など、申請をあきらめたり、申請してもはね返される人が少なくありません。

 ――雇用調整助成金、休業支援金、持続化給付金、家賃支援給付金などを必要な人に速やかに支給する。そのために、対象となる事業者、労働者への周知徹底、提出書類や手続きの簡素化、事前審査から事後チェックへの転換、申請者の立場に立った相談など、すみやかな審査と支給ができる体制にすること。

 ――家賃支援給付金から、賃貸借契約書などが提出できない事業者が排除されたり、休業支援金で、シフト制の労働者、登録型派遣の労働者などが除外されている状況をただちに改め、家賃支払いや休業の実態に即した支援を行うこと。納税しているにもかかわらず持続化給付金・家賃支援ともに排除されている「みなし法人」を支援対象にすること。

(2)リストラと大不況の悪循環を起こさないために、政府が「リストラ・雇い止め防止宣言」を行い、雇用危機を起こさないためにあらゆる施策を動員する政治姿勢を示すこと

 政府発表でも、コロナ危機で失職した人が急増して6万人を超えましたが、これは「氷山の一角」で、130万人の非正規労働者が職を失ったという指摘もあります。この多くは女性や若者です。さらに、上場企業の「早期・希望退職募集」が今年はすでに1万人を超え、8年ぶりの水準になろうとするなど、雇用不安は大企業の正社員にも広がっています。

 ――政府が「リストラ・雇い止め防止宣言」を行い、リストラ・解雇、「雇い止め」を止める政治に転換することを求める。派遣法の抜本改正やヨーロッパのような解雇規制法を制定するなど、雇用を守る労働法制の確立が必要だが、それを待たずとも、あらゆる行政手段、政治的なアピールを通じて、解雇・「雇い止め」を抑止すること。

 ――違法・脱法の「退職勧奨」や家族的責任や個人の生活を無視した広域配転などリストラのための人権侵害を厳しく監視すること。

 ――雇用調整助成金の特例措置の12月の打ち切りをやめ、対象を中堅企業などに広げること。失業給付上限を雇用調整助成金の特例に合わせて引き上げる、給付期間を延長するなど、失業者への対策の強化を求める。

(3)持続化給付金を複数回支給するとともに、「地域事業継続給付金」制度を創設すること

 持続化給付金は、上限が個人100万円、法人200万円で、コロナの影響が長引く中で「これでは足りず、事業を持続できない」という声が高まっています。コロナ禍が長期化しているもとで、苦境にたっている事業者への継続的な支援が必要です。とくに、地域や業種の実情にあわせて、感染防止対策や、ネットを使うなどの販路開拓、コロナ禍での商品開発、従業員の賃金への助成をはじめ、事業を継続・維持するための給付金制度を創設することが必要になっています。こうした支援は地方で取り組まれていますが、国が財政的支援を行って規模も対象も大きく拡大することが求められます。

 ――持続化給付金は一回限りとせずに、コロナ収束まで事業を維持できるよう継続的支援を行うこと。

 ――地域や業種別の実情などもふまえた支援ができるように、「地域事業継続給付金」制度を創設し、国がそのための「交付金」を地方に支給する。

 ――「Go To キャンペーン」を全面的に検証し、事業を抜本的にあらためること。全国一律の制度はやめ、地方主体の事業に抜本的にあらため、地域の実情や感染の状況に応じた支援が行えるようにし、中小・小規模事業者にも行き届く制度に改善すること。

 「Go To キャンペーン」は、もともと感染収束を前提にした事業だったという問題点にくわえて、(1)感染拡大の危険があり、(2)全国一律の制度の弊害があり、(3)一番苦しんでいる中小・小規模事業者に支援が届かないなど、さまざまな問題点が指摘されています。それらを現時点で全面的に検証し、事業を抜本的に改善することを求めます。

 ――外食・観光消費の低迷は、米価暴落など第1次産業にも及んでおり、国による米の買い入れをはじめ畜産、漁業を含めた支援を強化すること。

(4)「文化補助金」を受けやすいように改善し、国が出資して「文化芸術復興基金」を創設するなど、文化・芸術への支援を強化すること

 「文化芸術活動の継続支援事業」は、新たな事業を行うことが前提で、そのための自己資金を用意しないと申請できないなど、使い勝手が悪く、2次申請が終わっても予算額(509億円)の1~2割にとどまっています。

 ――あらかじめ自己資金を用意しないと補助が受けられない仕組みを改めるとともに、国が数千億円を出資して「文化芸術復興基金」を創設すること。

(5)貧困・生活困窮に追い込まないための支援を強化すること

 コロナ危機は、とくに低所得の人たちにきびしいくらしを強いています。“コロナでホームレスに”などという事態を広げてはなりません。

 国の貸付金(緊急小口資金、総合支援資金)の利用者は111万人を超え、過去最高となっています。わが党などの申し入れも受けて、政府はコロナ特例の期間を9月末から12月末に延長しましたが、コロナの影響が長期化・深刻化する中で返済免除や貸付の増額などの拡充が求められています。

 ――生活困窮者向けの貸付金の返済免除制度の拡充、住居確保給付金の支給期間(最大9カ月)の延長などの措置を講じること。

 ――「生活保護の申請は国民の権利」であることを自治体・福祉事務所はもとより広く周知徹底し、必要なすべての人が利用できるようにすること。

(6)消費税の緊急減税・免除を行う

 消費税の減税は、新型コロナの犠牲を一番深刻な形で受けている所得の少ない人への効果的支援になるとともに、中小企業の事業継続への重要な支援策になります。もともと多くの中小企業は消費税の転嫁ができず「自腹を切って」納税してきましたが、コロナ危機の中で、転嫁と納税はさらに困難になっています。政府も、経営困難な事業者への19年度分の「納税猶予」を行っていますが、今年納税できない事業者が来年4月に「2年分」を納税できる条件はありません。

 ――消費税率を緊急に5%に引き下げること。

 ――経営困難な中小業者には、19年度と20年度分の消費税の納税を免除すること。

 消費税減税や社会保障などの財源は、応能負担の原則をつらぬいて確保することが必要です。富裕層や大企業への優遇を見直し、応分の負担を求めることは、所得の再配分という経済の持続可能な成長にとって不可欠な仕組みであるとともに、格差拡大に歯止めをかけ、社会の不公正を正すために避けて通れない課題となっています。

3、未来を担う子どもと学生に、学びを保障し、生活を支える支援を

 子どもたちは、長期にわたる休校をはじめコロナ禍で大きなストレスを抱えており、学びと成長への抜本的な支援が必要です。学生は、大学のキャンパスにさえ入れず、バイトもできない苦しい学生生活を強いられ、2割の学生が「退学を考える」という事態になっています。

(1)少人数学級の実施に踏みだすこと

 長期休校など大きな負担を強いられた一人ひとりの子どもの学び、心身のケア、感染対策をはかるために、少人数学級は喫緊の課題となっています。

 ――義務教育標準法、高校標準法を改正し、正規教員を配置して少人数学級をすすめる。必要な教員を確保するために、処遇改善、長時間労働解消のための施策を徹底し、教員免許更新制を廃止する。

 ――学校再開後も小中高生の7割がストレスを感じているという調査もあり、子どものケアは引き続き重要になっている。「遅れへのあせり」から「詰め込み」に走るようなことなく、子どものストレスに配慮した学習計画と学校運営を行うようにすること。

(2)大学や専門学校での対面授業拡大への財政的支援と学生生活の支援を行うこと

 ――対面授業をはじめ大学での学びと交流を安全に実施できるよう、PCR検査や消毒、換気設備の設置など大学等の感染症対策に必要な財政支援など、国の責任で感染症対策を実施すること。

 ――学生支援緊急給付金は要件が厳しく、ほとんどの学生が「何も受給していない」(大学生協連調査)状況であり、要件緩和と規模の拡大など経済支援を抜本的に拡充すること。

 ――国の責任で授業料を一律半額免除すること。


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