2020年10月1日(木)
菅政権 過去最高の軍事費
概算要求5.5兆円 “武器爆買い”で借金膨らむ
イージス・辺野古でさらに増額へ
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防衛省は30日に決定した2021年度軍事費の概算要求で、過去最大の5兆4898億円を計上しました。20年度当初予算比で1764億円、3・3%増と大きく増え、9年連続で前年度を上回り、7年連続で過去最大を更新しています。菅義偉政権も安倍前政権の大軍拡路線を継承し、「米国とともに海外で戦争する国」を推進する立場を鮮明にしました。
しかも、20年度の軍事費で合計1837億円を計上した、辺野古新基地建設など米軍再編・SACO(沖縄に関する日米特別行動委員会)経費、129億円を計上した「イージス・アショア」の代替経費は「事項要求」として金額を先送りしています。これらが年末の来年度予算案に今年度並みで計上された場合、約2000億円上積みされ、空前の大軍拡になります。
費目別にみると、際立っているのが過去の借金返済(歳出化経費)です。前年度比2012億円増の2兆2338億円で急増し、過去最大に。安倍前政権がF35ステルス戦闘機やV22オスプレイなど、米国製武器の“爆買い”を進め、高額の「軍事ローン」を組んだことが原因です。
加えて、将来への借金ツケ回し(新規後年度負担)も2兆6712億円(前年度比1079億円増)で、過去最大を更新。菅政権も新たな“爆買い”で、将来に借金を回し、さらなる軍拡を招く悪循環を生んでいます。
全領域で大軍拡加速
2021年度軍事費の概算要求は、安倍晋三前首相が指示した「敵基地攻撃能力」の保有検討を視野に入れ、陸海空のほか、宇宙・サイバー・電磁波などすべての戦闘領域で軍拡を加速させる内容となりました。
敵基地攻撃
河野太郎前防衛相が示した敵基地攻撃の「一連のオペレーション(作戦)」は、ミサイル発射機などの位置を把握し、防空用レーダーや対空ミサイルを攻撃・無力化し、ミサイル基地などを破壊するといったもの。これらの作戦には、監視衛星や無人偵察機、敵レーダーに捕捉されず接近できるステルス戦闘機、敵レーダーをかく乱する電子攻撃機などが必要になります。
こうした敵基地攻撃能力を構成する兵器の導入を安倍前政権と同様に進めます。
ステルス戦闘機F35の取得(A型4機402億円、B型2機264億円)のほか、F15戦闘機の改修費に213億円をつけ、長距離巡航ミサイルの搭載や電子戦能力を向上させます。
F35Bを搭載するため護衛艦「かが」の改修費に231億円をつけ、飛行甲板の耐熱塗装や艦首の形状を四角形に変更。空母化を進めます。スタンド・オフ・ミサイル(長距離巡航ミサイル)の取得に172億円、高速滑空弾の研究に229億円を盛り込みました。
宇宙領域
70人規模となる「宇宙作戦群」の新編などを盛り込んだ宇宙関連経費は約724億円で、20年度当初予算から218億円の大幅増。新規事業として、マッハ5以上で飛行し、軌道も自在に変えられる極超音速滑空兵器の探知・追尾のため、「衛星コンステレーション」の導入検討で2億円をつけました。コンステレーションは多数の衛星が同じ軌道を周回する運用方式で、監視精度が高く、大型衛星に比べコストが低い上、1機が機能を失っても他の衛星が補完できます。
菅政権の本格的な宇宙軍拡への着手は、米軍の宇宙軍創設に連動したものです。米中ロの宇宙軍拡競争が加速しており、日本は米国の宇宙空間支配の一端を担い、際限のない軍拡につながる危険があります。
電磁波
電磁波領域では、専門部隊を留萌(北海道)など5カ所に設置。「電子作戦隊」(仮称)を朝霞駐屯地(東京都など)に設け、関連する電子戦システム一式の取得費88億円も計上しました。遠隔地にいる敵に電波妨害をかける攻撃機「スタンド・オフ電子戦機」の開発で153億円を計上しています。