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2020年9月19日(土)

主張

安保法制成立5年

今こそ「戦争する国」の阻止へ

 日本国民の空前の反対世論・運動を無視し、違憲の集団的自衛権行使などを可能にした安保法制=戦争法の成立が強行されて、きょうで5年です。同法の成立は、歴代政府が憲法9条の下で許されないとしてきた海外での武力行使に道を開き、日本を「戦争する国」につくり変える歴史的暴挙でした。この5年間で、米国の戦争に自衛隊が参戦し、武力行使する危険が鮮明になっています。

軍事衝突の危険いっそう

 北朝鮮の核・ミサイル問題をめぐり、米国の著名ジャーナリスト、ボブ・ウッドワード氏の新著『レイジ(怒り)』(15日発売)が波紋を広げています。北朝鮮による大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射実験などで米朝間の緊張が極度に高まった2017年、トランプ政権の下で米軍が改定した朝鮮半島有事の作戦計画に「80発の核兵器の使用」が含まれていたことを明らかにしたためです。

 17年に自衛隊の制服組トップだった河野克俊・前統合幕僚長も著書『統合幕僚長』(8日発売)で、当時の状況を振り返り、「もし、北朝鮮が計算を誤り、米国のレッドラインを踏み越えたら軍事オプション(選択肢)は現実味を帯びる。米国が軍事攻撃に踏み切った場合、当然、日本には大きな影響がある。その時、自衛隊として取れるオプションは何か?」「私の責任の範疇(はんちゅう)で頭の体操は当然していた」と語っています。

 河野氏はかつて、この自衛隊のオプションが安保法制に基づくものであることを告白しています(「朝日」19年5月17日付インタビュー)。その際、想定したのは、「戦闘地域」でも自衛隊による米軍への兵站(へいたん)が可能になる「重要影響事態」や、米軍への武力攻撃に対し集団的自衛権の行使として自衛隊が反撃できる「存立危機事態」だとされます(同)。核兵器使用を含めた米軍の戦争に、自衛隊が参戦する検討をひそかに進めていたとすれば極めて重大です。

 安保法制は、集団的自衛権の行使や「戦闘地域」での米軍に対する兵站のほか、▽地理的制約なく米軍の艦船や航空機などを防護するための武器使用▽内戦などが続く地域での治安活動や「駆け付け警護」―も可能にしました。

 自衛隊による米艦や米軍機の防護は、初めて実施した17年から19年までに32回に上ります。安倍晋三前首相はこれによって「日米同盟はかつてないほど強固なものになった」とも述べています。

 防衛庁幹部を歴任し、内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)も務めた柳沢協二氏は、米中間の軍事緊張が高まる南シナ海で日米共同訓練が行われていることなどに触れ、「米軍と共同行動する自衛隊は、米艦が襲われたときに武器を使ってこれを守らなければならないのですから、不意の軍事衝突に巻き込まれる危険も『かつてなく強固』になる」と指摘しています(『抑止力神話の先へ』)。

敵基地攻撃能力保有狙う

 菅義偉・新政権は、安倍前政権の方針を継承し、敵基地攻撃能力の保有について年末までに結論を出すため検討を進めています。集団的自衛権の行使などを可能にした安保法制の下で日本が他国を攻撃できる能力を持つようになれば、東アジアの軍事緊張が激化するのは明らかです。安保法制の廃止はいよいよ急務となっています。


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