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2020年9月18日(金)

“発熱 診てもらえない”

患者の不安解消は急務

受診相談窓口 行政は整備を

 病院に行っても、発熱のために診察を断られた―。新型コロナウイルスの感染が疑われ、医療機関で受診を拒否されるケースが今も一部で起きています。院内感染対策を十分にする条件がない医療機関にとって「苦渋の選択」の一面もありますが、受診を断られた側の不安は切実です。(岡素晴)


 愛知県内に住む30代女性は、1歳11カ月の娘が9月に入って発熱しました。「娘は生後半年ごろから中耳炎になりやすく、よく発熱していました。今回もそれだろうと思ったんですが」

かかりつけでも

 女性は、かかりつけの耳鼻科をインターネットで予約。事前にウェブ問診で熱以外の症状はないことなどを伝えていました。

 発熱のため感染症対策で院内には入れず、外のインターホンで看護師を呼び出し、娘の症状について対面で改めて説明。看護師からは耳を痛がる様子があるかと尋ねられました。

 そこまで痛がっている様子はないと答えると、「熱だけの症状だったら、別の病気の可能性が高いから小児科さんに行ったほうがいいよ。今うちでは診られない」と断られたといいます。

 「よく行く耳鼻科だったので断られるとは思っていなくて、びっくりしました。別の病院を探さなければならないし、次も断られたらどうしようと不安もありました」

 女性は、診察可能な小児科を見つけ、その日のうちに受診することができました。

 熱が下がらないと医師の診断はつかず、コロナウイルスに感染しているかどうかの検査は受けませんでした。解熱剤と抗生剤を処方してもらい、様子を見ることに。熱はなかなかひかず、不安に襲われたものの、4日目の朝ようやく快方に向かい、安堵(あんど)したといいます。

頭のけが断られ

 今月初旬、頭を強く打ってけがをした東海地方在住の20代女性も、熱が高かったため病院内に入ることを断られました。

 「私は平熱でも37度を超える日があります。腫れがひどく、頭痛などもあったので、念のため頭部の検査してもらおうと思って受診しました」。前日に37・5度あったことを病院の受付で伝え、検温したところ、「本日も熱がありますので病院に入れません」などと説明を受けました。

 医師が院外に赴いた上で診察を受けることは可能でしたが、院外では機器が使えず検査できないため、女性は受診を辞退。自宅で静養するうち、幸い頭痛などは治まってきているといいます。

支援不足で困難

 開業医らでつくる全国保険医団体連合会(会員10万7000人)の滝本博史事務局次長は、診療時間帯や場所を分けるなどして発熱外来を設け、感染疑いの人を受け入れる診療所が多くなっていると指摘。一方、新型コロナに対応可能な施設・設備対策への政府の経済的支援が全く不足しているため、そうした対応ができない医療機関もあると語ります。

 「発熱外来を設置していても、患者や医療従事者への差別の問題があるので公表していない医療機関は多い。診てくれるところを探すには、自分で多くの病院に問い合わせなければならないのが現状です」。滝本次長は、受診を断られ、どこに行けばいいか分からず不安な人のために、行政が気軽に相談できるホットラインの窓口をつくるべきだと強調します。「受診可能な病院を紹介するなど、受診しやすい環境を整えなければなりません」


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