2020年9月11日(金)
主張
日本経済の失速
破たんした政策からの転換を
日本経済の落ち込みがいよいよ鮮明になっています。今年4~6月期の実質GDP(国内総生産)の改定値(8日発表)は速報値を上回るマイナスとなり、家計の消費支出や働く人の給与も減少しました。新型コロナウイルスの感染拡大による経済縮小の影響だけではありません。すでに日本経済は安倍晋三政権の経済政策「アベノミクス」と、2度にわたる消費税増税で打撃を受けていたからです。安倍首相の辞任とともに、破たんした「アベノミクス」と決別して、国民生活を優先する政策に切り替えることが必要です。
記録的な落ち込み示す
4~6月期のGDPの改定値は、物価変動を除いた実質で前期(1~3月期)比7・9%の減です。この減少が1年間続くと仮定して計算した年率では、28・1%もの落ち込みになります。リーマン・ショック後の2009年1~3月期の年率17・8%減を超える戦後最悪の下落幅です。
実質GDPのマイナスは、昨年10~12月期と今年1~3月期に続き3期連続です。「アベノミクス」と消費税増税によって、日本経済がコロナ以前から大失速していたことを浮き彫りにしています。
GDPの内訳でも、内需の柱となる個人消費がコロナ禍で抑えられ、1980年以降では最大の減少でした。民間住宅投資や企業の設備投資の下落幅拡大も大きく響いています。雇用者報酬は、過去最大だった速報値での落ち込み幅を更新しました。前期に比べ3・8%の減です。
GDP以外の政府統計でも、経済の状況は深刻です。7月の家計調査報告では、1世帯当たりの消費支出が前年同月比で7・6%も減少しました。10カ月連続のマイナスです。7月の毎月勤労統計調査では、名目賃金が4カ月連続で減りました。残業代にあたる所定外給与は16・6%も落ち込んでいます。コロナ禍による中小企業などの倒産や、労働者の解雇や雇い止めも急増しています。
約8年にわたる「アベノミクス」は、大規模な金融緩和などで大企業や大資産家の利益を空前の規模に増大させ、大企業は内部留保を積み上げています。しかし国民の所得は低迷し、安定した雇用は増えず、貧困と格差を拡大してきました。さらに2014年と19年の2度の消費税増税は国民の暮らしを直撃し、消費を冷え込ませています。日本経済の土台を崩し、経済を落ち込ませてきた、安倍政権の責任が厳しく問われます。
安倍首相の後継を選ぶ自民党総裁選についての共同通信社の世論調査でも、「アベノミクス」を「見直すべきだ」という回答が58・9%を占めました(「東京」10日付など)。「アベノミクス」を評価し、その継承を売り物にする「後継者」には、国民の願いは託せません。
決め手は消費税の減税
コロナ危機から国民を守る対策を進めるとともに、いま決定的に重要なのは、「アベノミクス」を名実ともに終わらせ、内需と家計、中小企業に軸足を置いた経済政策に転換することです。
決め手は、消費税の減税です。消費税の税率を緊急に安倍政権が増税する前の5%へ戻し、消費を拡大してこそ、日本経済が立て直せます。その実現のために、市民と野党が力を合わせようではありませんか。