2020年9月1日(火)
主張
防災の日
激甚化する災害の備え強めよ
きょうは「防災の日」です。7月の記録的豪雨は日本各地に甚大な被害をもたらしました。現在北上を続ける非常に強い勢力の台風9号の被害も心配されます。激甚化する気象災害への対策を強めることは急務です。地震への備えも怠ることはできません。収束が見通せない新型コロナウイルス感染の防止策との両立をはかりつつ、あらゆる災害から国民の命と財産を守るためには、従来とは異なる特別な努力と工夫が必要です。自治体をはじめ現場で万全の対応がとれるよう、災害多発国・日本の政府の果たす責任と役割が極めて重要になっています。
過去の経験にとらわれず
九州を中心に猛威を振るった7月の豪雨は、多くの河川を氾濫させ、土砂崩れなども発生させました。すさまじい被害を出した熊本県の球磨川の流域をはじめ多くの被災地では、経験のない雨量を記録しました。短時間の激しい雨により、地域が一気に浸水したため、逃げ切れず自宅で亡くなった人たちも少なくありません。
梅雨時の大きな豪雨被害は2017年の九州北部豪雨、18年の西日本豪雨など近年続発しています。気象庁の観測では、日本の最近30年間(1990~2019年)の大雨の年間発生日数は、統計開始後の30年(1901~30年)と比べ約1・7倍になっています。大雨の頻度が増加し、激化している背景は「気温の上昇に伴う大気中の水蒸気量の増加がある」(20年版防災白書)と指摘されています。
日本周辺の海面水温の上昇が、日本に接近・上陸する台風の力を強めているとされています。昨年、房総半島を中心に暴風で大規模な停電や住宅被害をうんだ9月の台風15号、東日本の広範囲で河川を氾濫・決壊させるなどした10月の台風19号など大きな被害が相次ぎました。18年は台風21号の強風と高潮が関西などを襲いました。
地球温暖化が要因の一つとされる気候変動により、気象災害のリスクは一層高まっています。豪雨被害は全国どこで起きてもおかしくありません。過去の経験にとらわれず、激甚化を前提に、防災の仕組みづくりを加速する時です。
新しい様相を示す近年の災害の教訓を踏まえ、住民に対する速やかな情報提供、迅速に避難できる体制構築に向け、点検と見直し、改善を進めることは欠かせません。いまコロナ感染を心配し避難所に行くことをためらう人も少なくありません。避難所の感染対策がしっかりできるよう国は支えるべきです。被災者の健康はもちろん、人権とプライバシーが守られる避難所の整備は待ったなしです。高齢者や障害者など自力で逃げることが困難な人をサポートする体制を早急に整えることが重要です。
安全な国土づくり不可欠
「防災の日」は1923年に10万人以上の犠牲を出した関東大震災にちなみ制定されました。日本には分かっているだけで約2000の活断層があり、地震と無縁の地域はありません。大雨で地盤が緩んだところに地震が重なることへの警戒も必要です。首都直下地震や南海トラフ巨大地震の発生も想定した対策も不可欠です。
「経済効率一辺倒」のまちづくりや、無秩序な開発は災害への対応力を弱体化させ、被害を広げます。災害に強い地域と国土をつくることが何より求められます。