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2020年8月12日(水)

主張

日航機墜落35年

教訓がいま生かされているか

 乗客乗員520人が犠牲になった1985年8月の日本航空ジャンボ機墜落事故から12日で35年です。単独の飛行機事故として航空史上最悪の大惨事です。「絶対安全」は揺るがせにできない鉄則です。日航機事故の教訓が今、生かされているか問われています。

「利益第一」を改めるべき

 東京発大阪行き日航123便が離陸後、伊豆半島付近上空で操縦不能に陥り、約30分、迷走した後、群馬県上野村の御巣鷹の尾根に墜落しました。救助されたのは重傷の4人だけです。事故機が以前起こした「尻もち事故」の際のボーイング社による修理ミスを原因とする事故報告書がまとめられ、安全を二の次にして利益を優先した日航と、それを許した航空行政が反省を迫られました。

 事故後、日航は安全運航を誓いました。しかし2010年に経営破綻した後、再建初年度に利益をあげて回復したのに、パイロットと客室乗務員165人の解雇を強行しました。現場では過密労働がはびこり人員不足が深刻化しています。日航は利益最優先の姿勢を改め、不当解雇したベテラン労働者を職場に戻すべきです。政府は日航が公共交通機関として、安全と公共性を最優先するよう監督、指導を強めなければなりません。

 事故機を製造したボーイングはその後も製造主の責任による墜落事故を起こしています。18年、19年、同社の新型旅客機「737MAX」がインドネシアとエチオピアで相次いで墜落し、合わせて346人が死亡しました。飛行システムの欠陥が明らかになり、同社の最高経営責任者(CEO)が引責辞任する事態になりました。同機は格安航空会社(LCC)の台頭によって世界で高まる小型機の需要に応えるために開発されました。欠陥の背景に利益最優先の発想がなかったでしょうか。同社が日航機事故から何を学んでいたか厳しく問われます。

 航空行政についても、日航機事故を忘れたとしか思えない事態が進んでいます。安倍晋三政権は「国際競争力の強化」を前面に、米国が提唱した「オープンスカイ」を推進しています。互いに乗り入れる航空会社数、路線、便数などの制限を二国間で撤廃し、日本の空を他国の航空会社に開放する「空の自由化」です。政府はLCCの参入促進をはじめ、安全規制の緩和や首都圏空港の容量拡大など前のめりの姿勢を強めています。

 都心を低空飛行する羽田空港(東京国際空港)の新ルートはオープンスカイによる国際線増便に伴うものです。安倍政権は海外から人、モノ、カネを呼び込むと言います。容量が限界に達している羽田で発着を増やすのは安全の確保に逆行しています。新ルート下の住民や航空専門家は墜落や落下物、着陸時の急角度の危険性を訴えていますが、政府は警告を無視して3月に運用を開始しました。

命より大切なものはない

 航空会社の経営は新型コロナウイルスの感染拡大の影響で大幅に悪化しています。そのもとでも安全や公共性を犠牲にすることは許されません。政府は、安全を最優先させた航空行政に徹する必要があります。命より大切なものはありません。航空事業者と政府は日航機事故の教訓を今一度、胸に刻み、絶対安全を確実に実行しなければなりません。


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