2020年8月10日(月)
主張
2020年世界大会
「核なき世界」へ希望を示した
「被爆者とともに、核兵器のない平和で公正な世界を―人類と地球の未来のために」をテーマに、2日からオンラインで開かれていた原水爆禁止2020年世界大会は、核兵器禁止条約の発効など「核兵器のない世界」への行動を世界に訴え、9日の長崎デー集会で閉幕しました。広島・長崎の被爆から75年の節目に、希望を示す歴史的な成功をおさめました。
前進する禁止条約の流れ
核兵器禁止条約を支持する世界の流れが前進する中で大会は開かれました。発効に必要な批准国数(50カ国)まであと7カ国です。いよいよ核兵器の違法化に向けたカウントダウンに入りました。大会では、世界とアジアの平和団体・運動家や、禁止条約をすすめる国の政府代表から、自信と確信に満ちた発言が相次ぎました。
広島デー集会で、オーストリアのトーマス・ハイノッチ大使は、「明るい兆しも見えています。私たちは大義を掲げて立ち上がり、すでに多数派です」と述べ、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長も、禁止条約は「明るい光」とし、「参加する国が一つ増えるごとに、核兵器のない世界に近づきます」と語りました。北大西洋条約機構(NATO)の「核の傘」のもとにあるスペインで、禁止条約参加を求めているペドロ・アロホ氏(政党ポデモス前国会議員)は、アメリカの圧力に抗し、「必ず(政府の)調印が実現すると確信しています」と力強く述べました。
核戦力の近代化を競う米ロや、深まる米中対立などに、多くの人が不安や懸念を強めています。しかし、大会の討論は、着実に前進する禁止条約の動きを背景に、今後の世界への希望を語り合うものとなりました。
とくに、日本でも、世界でも新しい社会と世界を求める市民、とりわけ若い世代の行動が広がりつつあることも、参加者を励ましました。
イギリス核軍縮運動(CND)のケイト・ハドソン事務局長は、「パンデミックで新自由主義の破綻が浮き彫りになりました。若い人々が不正義に立ち向かっています」と強調し、アメリカ・ピースアクションのジョージ・フライデー氏は、黒人差別問題で立ち上がる市民にふれて、「人々は抜本的な社会の変革を求めはじめています。戦争と核兵器を時代遅れにしましょう」と呼びかけました。新しい運動の芽が、若い世代から大きく伸びてきています。
いま「核兵器廃絶と大規模な軍縮を行い、コロナ対策に力を集中せよ」という主張が多くの人の心に響く時代です。反核平和運動が、気候変動、貧困と格差の解消、ジェンダー平等、あらゆる差別の撤廃を求めるさまざまな運動と広く連帯していくことが、期待されています。
新しい政治の実現こそ
安倍晋三首相は広島でも長崎でも、核兵器禁止条約には一切触れず、参加を求める被爆者や被爆地市長の声に背を向けました。最新の世論調査でも国民の7割が「参加すべき」だと答えています。安倍政権と世論の乖離(かいり)は明白です。
被爆者の悲願と、唯一の戦争被爆国の国際的責務に応える、新しい政治が必要です。そのための市民と野党の共闘の発展が重要になっています。